第42話

(神になる絶対条件の一つ目は強さ、もうすぐだし)


「んあ?」


 目が覚め体を起こす。

 夢か? お告げじゃないよな、なんか……嫌な予感がするな……。




「ということで! お前等には強くなってもらう! 魔物を倒すぞ!」


 安全を考慮して元盗賊に魔物狩りを定期的にしてもらっていた。そのため近くにある魔物の森に入ってすぐには子供でも倒せるというスライムしかいないはずだ。

 スライムはすぐにわくし、将来冒険者になりたい者たちのために取っておいているらしい。


「どういうことなの!? ピクニックって言ったの嘘なの!? 二人はそれでいいの!?」


 ピクニックで魔物の森に行くわけないだろ、ついてくるとかこいつバカなのか? 普通騙される? お前しか荷物持ってないよ?


「私は魔法使い以外は無理なので基本的に見物して楽しむためだけに来ました、はやく苦しむ姿を見せてください」

「あたしが倒したげるよ!」


 わちゃわちゃ言いながら先頭を飛ぶフェアに続いて歩いていると、ネッコの姿がいきなり消えた。


「にゃあああああああ!」


 なんだ!? 何が起きた! まさかうちもらした魔物が襲ってきたのか!?


「きゃはははは! 引っかかったの! バーカバーカ!」


 一瞬焦ったが声のする方向を確認するとフェアが笑ってネッコが下にいた。

 なるほどな臆病なフェアがなぜ率先して先頭にいたのかわかった、こいつ落とし穴なんか仕掛けてやがった!

 よじよじと落とし穴から這い上がろうと上り、ズサーと滑り落ちてを何回か繰り返すと。ゆっくりと上を見ながら。


「あたし、なんで穴の中にいるんだろう。なんで獣人族なのに登れないんだろう。なんで空って青いんだろう。雲ってなんだろう。なんで料理が下手なんだろう、お裁縫も、運動神経も、なんで……」


 メンタルブレイクしてるじゃん。目が死んでるよ。


「そういえばチビネコが裁縫店に行って手伝ったっていう苦情が来てましたよ。迷惑なのでやめさせてください」


 手伝っただけで苦情来るの!?

 てかお前等そんなことしてたんだな。いや、こいつら何してんの? チームワークなさすぎない?

 こんなんじゃいつまでたっても魔物なんて倒せねぇよ。……仕方ない。俺が一肌脱ぐか。


「フェア隊員! 集合するのだ!」

「! はいなの!」


 穴の上を飛び回り、煽っていたフェアにやる気を出させる。

 最近は軍隊物の漫画を読ませておいたので、こーゆーノリをしたら乗ってくるんじゃないかと思ってた。


「お前らはゴミだ!」

「はいなの教官!」

「お前らはカスだ!」

「はいなの!教官!」

「お前らはクズだ!」

「はい……それはキュラなの!」

「はぁ!? 何言ってるんですか!? もうそれが言いたいだけでしょう!」


 バレたか。でもフェアも大概クズだぞ?


「実はそんなお前らに取って置きの戦法を考えてある! ネッコ! 小虎になれ! そしてフェア! それを右手に持て!」


 ビシッと敬礼していたフェアが腕を大きくさせ、穴からネッコを掴み上げる。

 いいチームワークだ。


「そしてキュラ! お前はコウモリになれ! それを左手に装備だ!」


 不満そうな顔をしながらもキュラはそれに従ってくれた。


「こ、これは。何の意味があるの? でありますか教官!」

「これは合体だ! 物理攻撃をネッコでガード! 魔法攻撃をキュラの肉盾でガードする! 間に物があればフェアも攻撃出来るんじゃないか?」

「なるほどなの!」

「え!? これが作戦ですか!? おかしくないですか!? これおかしくないですか!? 三分の二が肉盾ですよ!?」


 仕方ないじゃん、お前らに使い道ないんだもん。


「見ろ! 丁度いいところにスライムがきてくれたぞ! この世界最弱なんだろ? その力を見せてみろフェア!」

「はいなの!」


 とくに襲っても来ないプルプルしてるスライムに小石を投げて呼び寄せたわけだが。

 フェアがさっそく突っ込んでいく。キュラでガードしながら。


「ごぼぼぼぼぼぼぼ」


 接触し一度離れると、キュラだけスライムに取り込まれた。暴れていたキュラが動かなくなり、ペイっと吐き出されると。


「作戦失敗なの、使えないの」


 そうか。尊い犠牲だったな。


「一度休憩しようか」


 スライムの体の中心にはあきらかに弱点っぽい魔石があり、それを取り出すとあっさり形を失った。桶の中から小石を拾うくらい簡単だ。

 なんだろう、弱いんだが?

 とりあえずいまだに死んだ目をしてぐったりしてるネッコを復活させよう。

 その辺の石に腰をかけ、ケーキを出す。


「ケーキだ!」

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