第8話 商売繁盛と夫婦円満?①
もと子とは南海電鉄住吉大社駅のファーストフードで待ち合わせ。黒のカジュアルスーツに黒の革靴、青系のストライプのネクタイを白シャツにしめたリュウは仕事の話を終えて待ち合わせの時間まで得意先の社長と雑談をしていた。
「この後は奥さんと住吉大社でデート?新婚さんはいいねえ。」
リュウは困ったように頭をかいた。
「初詣では人が多すぎてじっくりまわれなかったんで。今回は特に商売の神さんとオモトさんにちゃんとお参りしたいなあと思いまして。」
オモト社は縁結びや夫婦円満、安産の神様。プロポーズらしい言葉もなくバタバタと結婚したものの末長くもと子といい夫婦でありたいとリュウは思っていた。
有名クラブの元人気スタッフで筋肉質の均整の取れた体に端整な顔、男も見とれるほどの色気を醸し出してハツラツと仕事の話をしていたリュウ。それが妻の話になると恥ずかしそうにトーンダウンしてしまう。社長とリュウのやりとりを事務員たちもなんだか微笑ましく見ていた。
「今日は初辰さんの日やからちょうどええ。しっかり種貸しさんからおまいりしといでや、須崎さん。」
「ありがとうございます。うちの所長からもお参りするなら初辰さんの日に行くようにと言われまして、それで今日こちらに私がお邪魔したってわけです。」
初辰さんは毎月、初めての辰の日に種貸社、楠くん社、浅沢社、大歳社の4つの神様を参って商売繁盛を願うもの。大阪商人に古くから親しまれている。
社長はリュウに少なくなったお茶を注ぎ足してやった。
「ウンウン、そうやったんか。で、住吉さんの後は決まってんの?」
「ええ。海を見に連れて行こうかなと思ってます。」
リュウは軽く会釈し、湯飲みに口をつけた。
「海!ロマンチックやなあ。今夜、生玉さんのお祭りもあるで。海の後どう?」
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