第27話 淀君さんと縁結び⑥

 ここに以前合祀されていた八兵衛大明神は茶店の入り口に新しいお社で祀られている。源九郎稲荷社は奈良吉野の源九郎稲荷の分祠。商売繁盛等がご利益。八兵衛大明神は道頓堀中座に祀られていたが、中座の閉館に伴い合祀されていた芸道の神様。


「ここの神社、狐のお稲荷さんと狸の八兵衛大明神さんが一緒にお祀りされてたんやで。」

「神様になると狐と狸も仲良しになるんですね。」

「お稲荷さんは商売繁盛に歯痛封じのご利益もあるらしいで。」

歯痛の言葉に甘党の2人はドキリ。こちらも並んで手を合わせた。

 隣のお社は鴫野神社。


 鴫野神社は大阪城の東、鴫野に弁天社があり、淀君が厚く崇敬したことから没後の淀君も合祀され、後に大阪城と縁深い生玉神社に祀られることとなった。淀君が大阪夏の陣で白蛇になって天に上ったとの言い伝えから巳さんとも呼ばれる。ご利益は心願成就、縁切り、縁結びで巳の日は特に願いが叶うとされ、心願絵馬に願いを託す女性が多い。


 この日もカップルや女の子同士がお参りしている。もと子とリュウも隣の鴫野神社の鳥居をくぐって並んだ。

「ここがお得意さんにすすめられた鴫野神社や。女の人の守護神らしいで。」


「わあ、そうなんですか?嬉しいです。」

もと子はウキウキした様子で列に並んでいる。


 少しずつ前に進み、神社のお社が近づいてきた時、お社の前に固まっていたグループが離れた。

「あ、これは?」


列の右側に並んでいたリュウがお社を指さした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る