第14話 商売繁盛と夫婦円満?⑦

「このおもと社さんは夫婦円満の神さんなんや。だからもとちゃんと来たいと思っててん。」

リュウは前を向いたまま照れくさそうに話した。それを聞いてもと子も顔を赤らめた。


 おもと社はお社の中に入って左側に神様が祀られており、正面から神様に相対することが出来ない。リュウともと子は入口の扉を開けて中に入り神様を拝んだ。


 手を合わせた後、もと子は至るところに置かれている土人形に気がついた。

「あれ?男女裸ですね。こっちの赤いのは服着てるのに。」


少し恥ずかしそうにリュウを見た。

「それ、夫婦円満の裸雛さんや。赤いのは良縁祈願やったかな。買う?」

「まだ恥ずかしいので、今度。」

「そやな、次回の楽しみにしとこか。」

照れくさい2人はお社から出た。


 今日は初辰さんの日。

おもと社を出たところで初辰参りに行くことにした。

まずは種貸社。第一本宮の左手の出口を出て、左側を進むと見えてくる。


 種貸社の手水舎には一寸法師がいる。狛犬は背中に子供を背負って水木しげる風の顔をしているのが愛らしい。2人は早速、種貸社でご祈祷してもらい「お種銭」を頂いた。


お社を出るとそこには人間が入れるサイズの一寸法師のお碗があった。

「これ、何ですか?もしかして一寸法師のお椀?」

「もとちゃん、ここは一寸法師にならなあかんわな。」


「不思議だったんですけど、なんでここに一寸法師なんですか?これ、ホントに乗るんですか?」

ええ?と言いながらもやる気満々のもと子はお碗に入り、櫂を持つ。


「御伽草子によると住吉さんの界隈のじいちゃんと婆ちゃんが住吉さんに子宝をお願いして授かったのが一寸法師なんやって。一寸法師はお椀の船でこの辺りの海から淀川を遡って都に行ったんや。」

リュウは一寸法師のお椀でポーズを取るもと子をスマホで写した。お椀から降りたもと子は今撮ってもらった写真を楽しげに見ている。


「でも、一寸法師ってあんなプチな体で淀川を遡るってすごいパワーですね。」

「神様の申し子やからな。そうでもなかったら鬼なんかやっつけられへんで。」

なんだか妙に納得した2人だった。


 種貸社から南に進み、次は楠くん社。

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