第11話 商売繁盛と夫婦円満?④

 カバンから封筒を取り出し、もと子は写真をリュウの前に置いた。そして石田から聞いた話をし始めた。


 最初に見せたのは婚姻届を持つ両親の写真。

「もとちゃんのお父さんとお母さん、若いなあ。今から届け出すねんな。」

「はい。ウチの両親、準備万端の計画駆け落ちで駆け落ちの途中に入籍したんです。」


「え?これ、駆け落ちの途中なんか?やるなあお父さん達。」

もと子は母が家族に大切にされていなかったこと、父と駆け落ちして幸せだったことを話した。


 次にどこかの神社の前で絵馬を手に2人が笑顔で立っている写真を見せた。

「この神社でお母さん、お父さんと結婚できますようにってお願いして願いを叶えてもらったんだそうです。」


「ああそう言えば、得意先の人に生玉神社さんの中にある鴫野神社さんで同じようにお願い叶えてもらった人がおったな。もとちゃん、生玉さん行ってみる?今夜お祭りらしいねん。」

「お祭り?行く行く、絶対行きます。」


 その次は赤ちゃんのもと子を抱く母と2人を抱き抱えるようにして照れくさそうにしている父の3人の家族写真。その後は幸せな家族写真が続いた。最期の写真は10本のローソクが立つバースデーケーキの前に座る小学生のもと子と両親。


「この後、お父さんとお母さん…」

もと子は言葉に詰まり下を向いてしまった。リュウはそっともと子の肩を抱いた。


「これからは俺がもとちゃんといつも一緒や。」

まつ毛を濡らし、泣き笑いの顔でもと子はリュウを見上げた。

「リュウさん、末永くよろしくお願いします。」

おう!リュウはもと子の頭をワシワシ撫でた。


そこへ天ぷら定食が運ばれてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る