第10話 商売繁盛と夫婦円満?③

 お昼前、リュウが待ち合わせの店をのぞくと、もと子はすぐ気がついて出てきた。


 リュウはネクタイやシャツのボタンをはずし、上着は腕にかけてラフにしている。

もと子はリュウに駆け寄るとそっと腕に触れてきた。


かわいいヤツ。リュウはもと子の手を取った。

「お待たせ。飯行こうか。」

「はい!お腹ぺこぺこです。」

もと子は童顔をほころばせた。


 リュウは駅近のレトロ感のある和食の店へもと子を連れていった。食後は住吉大社、特に今日は初辰さんのお参りもする予定。


お昼には早めだが勤務先の所長から初辰さんのお社は早めに閉まると聞いていたのでちょうどいい。座敷に向かい合って座るとメニューをもと子に見せながらリュウは説明した。


「ここは大正時代から豆飯で有名なんやで。ここの豆飯の豆は炒った大豆なんや。」

「あ、ホント。グリーンピースじゃないんだ。」


2人は豆飯のついた天ぷら定食を頼んだ。お茶で喉を潤したリュウはもと子にたずねた。

「もとちゃんは結局、太融寺さんに行けたんか?」

「行けました。ちゃんとパパとママの供養もお願いしてきました。」


「そりゃ良かった。それで梶原のおばちゃんの謎は解けたん?」

もと子は腰に手を当てるとドヤ顔をして見せた。


「もちろんです。答えは淀君でした。ちゃんと淀君には釣鐘まんじゅうごちそうさまですとお礼を言ってきました。」

「もとちゃん、お供えもしてへんのに、ごちそうさまはひどいやろ。バチ当たるで。」


「え?ダメ?」

もと子の目が左右に泳ぎ始めた。その様子にリュウがプッと吹き出した。

「今度は俺も一緒に太融寺さん行くわ。淀君に一緒に謝っとこ。」


「絶対ですよ!約束!」

結構な必死なまなざしでリュウの目の前にもと子は小指を立てた。その小指に自分の小指をからめてやったリュウはもと子をヨシヨシとなだめた。


「うん。約束な。で、お母さんの友達に会えたん?写真もらえたんか?」

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