第2話 釣鐘まんじゅうの賭け②
税理士の卵である夫のリュウは午前中に住吉大社近くの得意先に書類を届ける予定。その後は半休なので、住吉大社近くでもと子と集合。それまでにもと子は太融寺での両親へのお参りをすませる予定だ。
今日のもと子はポニーテールにミントグリーンのロングスカートと白いTシャツ。足元はバレエシューズ。
太融寺の扇町筋沿いの細い入り口、一願不動の幟が立つその入口から入ってすぐ右の通路を行くと人の背よりも大きな憤怒の表情をした石の一願不動明王が立っていた。
薄暗い空間にろうそくの灯りが揺らめく。大きな香炉に供えられた線香の香りが辺りを清浄なものにしている。
にぎやかな通りから少し足を踏み入れただけでこの世のものとは思えぬ仏の世界。もと子は幽玄な世界に飲み込まれていった。
手を合わせて一願不動明王を見上げると厳しさだけではないものを感じる。お参りの間も何人もの人がお不動さんの周りを拝んでは回っている。これがお百度参りというものか。敬虔な空気の中、もと子も気を引き締めてお不動さんに手を合わせた。
「リュウさんと幸せな家庭を築けますように。」
心を込めて祈った。
若い頃のパパとママもどこかの神様に同じことを祈ったんだ。
ふと先ほど会った石田の事を思い出した。
それは前月、高校卒業までお世話になった施設の施設長からの電話で始まった。
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