もう一度プロポーズー浪速の縁結びツアー
@ajtgjm159
第1話 釣鐘まんじゅうの賭け①
①
「ホント、大阪の地下街は迷路やわ。」
たくさんのお店を楽しくながめながら歩くと方向感覚がなくなっているのに気づく。
で、今どこに向かってる?
とりあえず、ここどこ?
スマホのマップから外れている。あれ?あれ?と言いながらようやく地下街の東端、泉の広場に着いた。階段を上がってすぐの太融寺にもと子はようやく着いた。
太融寺は嵯峨天皇の勅願により弘法大師が創建した寺。本尊は嵯峨天皇の念持仏の千手観音。左大臣源融が伽藍を建立した名刹。
最近、結婚したもと子は死んだ両親を供養して結婚の報告をしようと考えた。しかし、供養などどうしていいかわからない。知人の梶原のおばちゃんに尋ねた。
「お盆にうちも四天王寺さんで先祖供養してもらうから一緒に行こ。そやから今回は観光兼ねて太融寺さんに行きや。」
「太融寺さん?一人でですか…」
もと子の声がトーンダウンしていく。
「あんな太融寺さんでも卒塔婆いう薄い板に供養してほしい人の名前を書いてくれてな、夕方にまとめてお経読んでくれるんよ。」
「…そういうシステムなんですね。」
「そうそう。太融寺さんはたくさん神さん仏さんお祀りしてはるからいっぱいお願いしておいで。有名人の墓もあるしな。」
「有名人?誰ですか?」
「それは行ってみてのお楽しみや。ビッグネームやで。当たったら四天王寺さんの釣り鐘まんじゅう買ったげよ。あっさりしてなんぼでも食べれるで。」
「釣鐘まんじゅう?」
「四天王寺の釣鐘を模したカステラ生地に甘さ抑えめのしっとりこし餡が入ったやつやで。ウチのおっちゃんなんてウチが四天王寺さん行った日は「ある時、ない時」ってCMみたいになるで。」
「551の豚まんのCMですよね。豚まんがある時、テンション上がってニッコニッコ。ない時、お通夜みたいになるっていう。」
「そうそう。よう知ってるやんか。さあ、どうする?」
おばちゃんは挑戦的に不敵な笑みを浮かべた。
大阪人ならみんな知っている551の豚まん。厚めの柔らかいほんのり甘い生地に玉ねぎと豚肉のベストマッチな肉汁たっぷりのあん。一口かむと口中に豚肉の旨味と玉ねぎの甘さが溢れる。看護師のもと子は疲れて夜中に帰宅した時、いつもなら速攻布団にまっしぐら。豚まんがある時、パジャマに着替える間に豚まんを温め絶対食べる。そして至福の中で眠りに落ちる。もと子こそある時、無い時のCM のままなのであった。
「うう、551の豚まんレベルなんですか?そんな話聞いたら、頑張るしかないです!」
食いしん坊のもと子は梶原のおばちゃんにまんまとのせられた。
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