第5話 釣鐘まんじゅうの賭け⑤

「ウフフ、駆け落ちの準備してたの。信治さんはサツキちゃんちの会社の社員だったの。だけど先に辞めて別の所にアパート借りて、再就職してね。だから結婚式の朝にサツキちゃんが居ないと大騒ぎになった頃にはもう入籍してたのよ。」

石田はしてやったり!というような表情を見せるともと子に笑いかけた。


「あたしたちは中高大学までのエスカレーター式の学校だったの。サツキちゃんのお母さんが中学からの友達の家に電話しまくってね。でも入籍してることがわかった途端にサツキちゃんの行方探しをやめちゃった。」


「,,,それもひどいですね。」

「うん。でも2人はそこから安心して暮らし始めたの。」

石田はもと子が知らない若い頃の信治とサツキの話もしてくれた。


「さっき神社の写真あったでしょ。あの神社でお願いして信治さんと結婚できたからって私にも絵馬を送ってくれたの。お願い事をして送り返してくれたら私が代理で神様にお願いしとくって。私にも幸せをお裾分けって。」


「お母さんと本当に仲良しだったんですね。」

石田はニコニコとうなずいた。

「その時、生姜湯とお味噌を送ってくれたの。その生姜湯がね、面白かったの。」


「面白い生姜湯?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る