第20話 黄昏にきらめいて①

 ナンバで南海電車から地下鉄に乗り換え、コスモスクエア駅からニュートラムに乗り換えて一駅。トレードセンター前駅で降りた。

「リュウさん、どこへ?」

「あ、うん。」

リュウは言葉少なにもと子の手を引いてATC の中を通り抜け、コスモタワーの大阪府庁の咲洲庁舎の展望台にやって来た。


 52階までシースルーのエレベーターに乗る。どんどん上がっていくエレベーターから眺めると人も車も建物もどんどん小さくなっていく。もと子はシースルーの壁に張り付くようにして外を見ていた。


 53階からは長いエスカレーターに乗り、展望台に到着。360度ガラス張りの展望台からは足元の大阪湾から大阪、神戸まで見える。南の方を見れば水平線が空と海の青の中に溶け込んだよう。傾きかけた太陽の陽射しに水面はなめらかだった。


 もと子は吸い込まれるようにガラスの壁面に歩き出した。そしてリュウの方を振り返った。

「素敵な景色ですね。もっと見てて良いですか?」

「気に入ってくれた?嬉しいわ。今から日が沈むやろ。その景色をもとちゃんと一緒に見たかってん。」

照れくさそうなリュウにもと子は体を寄せてきた。リュウはもと子の腰に手を回して引き寄せた。


 展望台から見下ろす大阪湾。海は穏やか。鏡のように光る水面。タンカーや大小の船がゆったり浮かんでいる。

まもなく夕暮れとなり、水平線に沈み始めた夕日。青が色濃くなっていく空と海。それに対し水面は金色に、雲はオレンジに染まる。ため息が出るほど美しい。


 少しずつ夕日が沈んでいく。入れ替わるように街の明かりがきらめき出す。たくさんの光りの道が縦横に駆け抜ける。その合間を黒のビロードの上に宝石をちりばめたような明かりがきらめく。大きな観覧車のネオンがくるくると変わって色とりどりの美しい模様を作り出す。


相変わらずきれいやな。リュウは改めてここの景色をもと子に見せてよかったと思った。と、その時、ガラスに映るもと子の目から涙が一筋こぼれ落ちていることに気がついた。

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