第19話 商売繁盛と夫婦円満?⑫
「ここが誕生石や。源頼朝の側室が妊娠してな、北条政子が殺そうとしたんや。側室さんがここまで逃げてきて、ここで石にしがみついて生んだ赤ちゃんが島津の初代の殿様になったんや。」
「ええ!ここで生んだんですか?大変でしたね。」
「そやからここは安産祈願のスポットや。将来は俺らも来たいな。」
もと子は恥ずかしげにリュウを見上げ、2人は手を合わせた。
「最後に大海神社さん行こうか。」
再び回廊沿いに東へ歩き、種貸社の手前を奥に進むと立派なお社が現れた。お社の前にある井戸に立つとリュウはこっちこっちと手をヒラヒラさせた。
「この玉の井はな、海神さんからもらった海の干満を司る潮満玉を山幸彦が沈めたんやで。」
「古事記?聞いたことあります。ここに沈めたんだ。住吉さん、やっぱり海なんですね。」
「うん、ここの神様、海神さんや。」
2人は海を思い描きながら大海神社で手を合わせた。
「もとちゃん、お疲れさん。住吉さんはこれで終わり。この後、事務所のお土産買うの付き合って。」
「次は何処に?」
リュウはもと子の手をとって大海神社の前の階段を下りた。
目の前の紀州街道をチンチン電車が通る。紀州街道沿いに北へ少し行くと和菓子のお店が見えてきた。
「ここ、明治創業でな、さつまいもを模したお菓子が美味しいねん。」
甘党のもと子の目がキラキラと光った。
店内に入るとリュウはさつま焼きを店員に頼んだ。
「さつもいもに形が似てるんだ。どうやって作るんですか?」
「こし餡を特製の生地で包んで竹串に刺して焼くって聞いたで。とにかくこし餡が優しい甘さで口にいれると生地と合わさって、ほこっと旨いねんな。あ、お茶飲みたなったわ。一緒に食べたい。」
ごくりと生唾を飲み込んだもと子は思わずリュウの腕に手を絡めた。
「あの、うちの分も欲しいです。」
もちろんや、リュウはフフと笑った。
ようやく住吉大社駅に戻ってきた。まだ日暮れには日が高い。
「生玉さん、行きますか?」
「うーん、もとちゃん。見せたい景色あるねん。もう少し付き合ってくれへんか?」
「はい。もちろんです。,,,景色?」
キョトンとしたもと子は首をかしげた。リュウに肩を抱かれてもと子は電車に乗り込んだ。
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