第31話  レベル5自動運転車内の質問コーナー

 はじめに仁田本にたもとさんに質問をしたのは、穂香ほのか(大)だった。


「あの、わたし達が向かう先は、二階堂先輩がお住まいの千駄木のマンションということでしょうか?」


「そちらのマンションは、現在は、昴様すばるさまの甥に当たる方が住んでおられます」

 と、仁田本にたもとさん。

 

「本日向かいます先は、亀戸駅そばにございます、二階堂家の分家宅となります」


(おおっ、本家と分家!)

 わたしの中の、昼ドラ脳がさらに活性化していく。


「分家の御宅には、その、側付きのような方がいらっしゃるとのことでしたが、それは……メイドさん達ということでしょうか?」


「はい、メイドの役もこなしておりますな。本日は、岡本おかもと真鍋まなべの2人が、側付きとして宅におります」


(なるほどぅ、らしい服とかではなく、本物のメイド服をきこしめす方がいらっしゃる?!)

 ……って、きこしめすって正しい日本語だったけ?! などと思ううちに、話のターンは、穂香ほのか(大)に移っていった。

 

 ☆

 

 ほどなくして、送迎車のディスプレイに、《目的地到着まで3分》といった表示が現れた。さすが、自動運転機能レベル5、運転席に座る仁田本にたもとさんの手を煩わせることなく、亀戸の御宅に到着するらしい。

 レベル5の送迎機能に感動したわたしは何という気もなく、仁田本にたもとさんに話しかけた。

 

「お車は、もう御宅に到着するのですね。いずれは、レベル6に達する自動運転機能も出でくるものなんでしょうかね」


「それは、『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着く』という類のレベルですな。地上の自動運転車メーカーは、天上を目指す意志は今の所ないかと」

 

 仁田本にたもとさんに見事に返されてしまった。


「ですよねぇ」

 と、中途半端に返しての二言三言を仁田本にたもとさんと話すうちに、送迎車は、二階堂家の亀戸の分家邸の門の前で静止した。


✧ 


 その時は、まさか、この御宅にて、他ならぬわたしがまさか神ならぬ身にて天上に、とかいう、どこぞのまさか私が京大へといった類の世界にいざなわれることになるとは思いもしなかったのだが……

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