第18話 わたしの身体測定
別室の測定室に皆で向かう時、中身31歳のわたしは世慣れした口調を隠そうとはせずに、
「そうですね。ふたりとも『ナギサノホノカ』なのは紛らわしいでしょうから、見た目13歳くらいのわたしのことをとりあえず
と、二階堂先輩に話す。
「わかった」
二階堂先輩は、うなずいてくれた。
☆
「すまないが、まずはそれぞれの直近の体重を教えてくれないか?」
測定室に入った先輩のその質問には、
「実は私の部屋には、体重計がないんです」
と答えた。
そう、わたし達は子供の頃から、身長の伸びには多大な関心があった。なにしろ、宝塚のスラリンとしたお姉さま方に憧れていたわけだから。
とはいえ、18歳から身長の伸びが止まったことが明らかとなった二十歳の頃には身長の伸びにはあきらめがつけられた。結果、身体測定そのものへの関心がなくなっていった。小柄痩せ型の母の遺伝子を受け継いであろう太りにくい体質だったので、会社の健康診断で測定されるわたしの体重は、社会人になってからの10年間、いつも45Kg以下だったわけだし。
「わかった。まぁ、いわゆる痩せ型の体重だろうということか。では、まずは
と二階堂先輩。
先輩も、わたし達が女性であっても体重を気にしていないことは理解したことだろう。併せて、身長は気にしていたことも。
先に呼ばれた
身長体重の他に体脂肪率とかいろいろと測定する計測機なのだと思われる。
ハイテクそうな計測器がここにある経緯が気になった。
「この計測室は、もしかして普段はボノボ達の身体測定をするためのものなのでしょうか?」
と聞いたわたしに、先輩は
「研究所の設立経緯からしても当然そういうことだ。さぁ、次は、
とお答えになり、淡々と測定を促す。
既に靴下を脱いでいたわたしは、「はい」と返事をしてちゃっちゃと歩き、体重身長などなど測定器の上に立った。
測定を終えたわたしが靴下を履いていると、
「これはすごいな・・・2人のBMIが大きく相違している」
という先輩の声が聞こえてきた。
((何が?))と、わたし達が二階堂先輩の方を向くと、
「原因は
と
(はて?) わたしは、目を
「そちらに、もう1つ体重計があるので、乗ってみなさい」
二階堂先輩は、普通らしい見た目の体重計を指さした。
「はぁ」
わたしは解せない思いと共に、普通らしい体重計に乗った。
表示された数値は、53.3Kg。わたしの人生初の50Kg越えだ。
「私も乗ってみようか?」
数値は、44.3Kg。確かに、わたし達の間の体重差は9Kg、らしい。
☆
先輩の研究室に戻り、わたし達は再び椅子に座って、先輩と向き合った。
「意外な測定結果ではある。
そう言った二階堂先輩は、目を瞑って静止した。アゴのところに触れているのが掌ではなく拳であるならば、ほぼロダンは「考える人」のポーズである。
この数日間、部屋に籠もっていることが多かったとはいえ、ここまでわたしの体重が増えることは、当然ない、だろう。
脳内年齢31歳のわたし、身体が13歳っぽく若返っただけではなく、人類の範疇を越えた何かなのかもしれない。以前のわたしとの体重差の分の何かが体内に埋め込まれているのだろうか?
わたしの脳内にハテナが広がっていく。
「とはいえ、
いつの間にか、「考える人」を止めていた二階堂先輩がわたしに尋ねた。
わたしは少し間をおいて考えてから、と答えた。
「この身体になった直後、駅に向かっている時に、自転車をこぎにくく感じたくらいですかね。それもサドルの高さがあってないなと、水元公園で調整した後は自転車をこぐ違和感は、ないですけれども」
「ふむ」
先輩は黙考を再開なされた。
先ほど、
これまで、特に身体が重いなどと感じた記憶もない。ヨーガをしていた時も、バレエのターンや自衛隊体操をしていた時も、違和感はなかったわよね。
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