第16話 コンゴ友愛祈念ボノボの森の今

 穂香ほのか(大)が、ボノボの森の一般公開フィールド前駐輪場に自転車を止めた。わたしも続く。この駐輪場は、コンゴ騒乱で犠牲となってしまった人々とボノボ達に祈りを捧げる人が無償で利用できる。わたし達は、入り口の祈念の台で手を合わせてから、ボノボの森沿いの遊歩道に向かう。

 

 穂香ほのか(大)は初めて生で見るボノボ達を左右にキョロキョロと眺め、わたしは少し懐かしく思いながら彼ら彼女らを眺める。


 けれども、ボノボ達の姿は、わたしの記憶とは違っていた。


(やっぱ開園したばかりの頃は義手や義足は不十分だったのかぁ)


 わたしが通っていた頃は、ボノボの森が開園してから5年ほど経っており、ボノボたちはそうとは気づかないほどによくできた義手・義足を身につけて、のんびりと過ごしていた。


 眼前で、片手のボノボが片足のボノボと、ゆっくりと抱き合っている。

 記憶の中のボノボ達よりもしょんぼりしている気がするボノボ達を目にして、(やっぱり、わたしは時間遡行タイムトラベルをしたんだね)

と、わたしは、少ししんみりとなりつつ実感してしまう。


 ☆

 

 ボノボの森を出たわたし達は、いったん東都理科大のキャンパスに入ってから、二階堂先輩の研究室がある霊長類研究所を目指す。

 

 らしい制服姿のわたしは、母校のキャンパス内を穂香ほのか(大)の後ろに続いて歩く。すれ違う学生たちの何人もが、わたしの姿にちらちらと視線を向ける。


(まぁ、こんな小学校みたいな見た目の子が、中学生らしいセーラー服着て大学のキャンパスを歩いていたら、ちょっと気になるはずよね)


 脳内記憶では一人前の大学OGであるわたしは、しょうがないわね、と達観しながら、ちょこちょことキャンパスを歩いた。

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