第4話 ほのか(大)の納得
目を醒ますと、夕方になっていた。
かなりの空腹感があった。身体が小中学生バージョンになったためだろうか。
部屋の灯りをつけ、冷蔵庫を覗く。パックの焼きそば麺が目に入る。卵と野菜とソーセージもあるのを確認したわたしは、まだ見ぬ23歳の
(ちょっと頂いちゃうね)と心の中で報告しておいた。
フライパンを取り出し、ふたり分の焼きそばを作った。
ずぞぞっと、フライパンの焼きそばの半分を一気に食べ終えてから、残りは23歳の
そして、わたしは、通勤カバンに丸めた状態で入れてあるスレートを取り出した。スレートを平らに展開し、てのひらに乗せる。掌認証により、スレートがわたしモードになり、四葉グループのアイコンがくるくると回転を始める。
いつものアイコンが回転を終えるまでを見終えたわたしは、スレートをふたたび丸めカバンに戻した。
アイコンが表示されている画面上で認証用の一筆書きをすると、スレートはインターネットにつなぎにいくことになる。
ただ、わたしにその勇気はない。私用端末へのセキュリティ対策のため、スレートは、まっさきに四葉グループのセキュアな通信網につなぎにいく。勤務先がまだ三井ハイケミカルであるこの時代のネットワークに接続することは、ここに変な端末がありますよ~、とアピールすることになるはず。脳内年齢31歳のわたしにその勇気はない。スレートにはオフラインでも2055年の情報が格納されている。いずれ情報が必要となる時もあるかもしれない。
机の上の時計でまもなく夜7時であることを確認したわたしは、灯りを消した。再び、
☆
十分ほどの後、玄関の方からカチャリという音がした。パチンという音と共に、玄関と部屋の灯りが点灯する。
廊下を歩く音がして、部屋の扉が開く。現れたのは、部屋のカレンダー通りに、23歳と思しき
「よっ。お邪魔しちゃってるわね」
『
振り返った
「ひゃっ?」
と声を上げた。
それから、おそるおそる、わたしを見ながら、
「もしかして、
と言った。
わたしは、
「そういえば、隣室の
と言いながら、わたしは23歳の
中1の時の
「でもね、お誕生日の前祝いをしにきたわたしは、
といって、23歳の
そして、
「ビッくらポンポンだよね?わたしも、そうなんだよ」
と、小学校の頃に母がたまに言っていた口癖を出して、笑いかけた。
そこから10分ほど、わたしは今朝に部屋を出てからのことを、
わたしの通勤スーツの脇にかけてあるブラを指差しながら、急に緩んだのでコンビニでブラを外してしまったことを話す。そして、駅の駐輪場でわたしの先代のチャリちゃん、つまりは
部屋に入ると、だいたいのものが記憶通りだった。PCを借りて、今が2048年3月2日であることを知った。混乱したので、とりあえず入浴した。
「・・・ということで、この姿に似合いそうな服ということでこのジャージを借りちゃったのね」
と言ったわたしは、通勤バッグから黒色のIDカードを取り出し、
黒色のIDカードを初めて手にした
表示を見つめている
「これ、今のわたしが見たまんまの中学生の時のわたしではないという証拠になっちゃうよね」
と微笑んだ。
そう、
「そうね。ほんと、雛まつり前の大サプライズだけれど、まぁ、納得したよ」
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