第38話 王城へ
「はぁっ..はぁっ..」
ヨルアは活気の絶えた王都を必死で走っていた。
行き先はただ一つ、王城だ。
いくら魔人であろうとこれだけの広範囲に魔法をかけ続けることは不可能だ。
必ず維持のために必要なものがあるはず。
それさえ壊せればこの魔法は解ける。
王城に向かっている理由もそれだ。
効率的に魔法をかけ続けるなら王都の中心に設置するのが良いはずだ。
王都の中心、王城に。
城の正面が見えてくる。
門の前には門番と思われる兵士が数人倒れていて、誰にも咎められず中に入ることができた。
城の中は静まり返っており、至る所に倒れている人が居る。
(ごめんなさい..)
もし私が隠さずにちゃんと伝えていたら、こんな事態にはならなかったかもしれない。
胸にあるのは後悔と罪悪感。
それでも今はやるべきことがある。
この場所で探し出さないといけない。
実はありそうな場所に心当たりがある。
(あの魔人はリーマン公爵という人物と手を組んでいた..公爵なら王城に部屋が用意されていてもおかしくないはず..その部屋なら容易に必要なものを置けるはず)
あとはリーマン公爵の部屋の場所だ。
城の構造なんて分からない。虱潰しに探すしかない。
一階には流石にないだろうと思って上階から探していく。
するとある部屋の扉からひときわ強い青い光が漏れていることに気づいた。
杖を構えて慎重にドアを開け、中を確認する。
どうやら執務室の一室のようだ。
壁を見ると肖像画が飾られており、そこにはリーマン公爵が描かれていた。
「みつけました!ここにきっと..」
辺りを探すと青白い光を発している本が机の上に置かれていた。
「ありました!」
興奮しながらその本に近づく。
その本は暗い紫色の背表紙に題名は書かれていない。
早く破壊しないと。
だけど城の人達を巻き込むような魔法は使えない。
できるだけ本だけを壊せる魔法を選んで唱える。
「
放たれた風の刃が本に直撃する。
しかし傷一つ付かない。
きっと防壁の魔法をかけてあるのだろう。
他にもこの場で使える魔法を試すが壊れない。
「これじゃダメ..もっと大きな魔法じゃないと」
本を持って部屋を出る。
とにかく近場にある広い場所を探すと城の中に兵士が使う訓練場があった。
幸い、夜だったからか使われておらず倒れている人はいない。
ここなら使える。
本を訓練場の真ん中に置いて距離をとる。
魔力を一心に溜め、今持てる最大の魔法を放つ。
「
黄金の雷が天から降り注ぎ、訓練場を焼き尽くす。
本はしばらく原型を保っていたがバキンッと何かが割れるような音がすると、焼け焦げて跡形もなく消え去った。
それと同時に王都に蔓延していた青い光も徐々に弱くなっていく。
(これで止まったでしょうか..?)
大量の魔力を消費し、酷い倦怠感を感じるが立ち止まっていられない。
クロガネが姿を現さない。
まだ、戦ってる。
「早く..援護に..」
気持ちとは裏腹に身体は思うように動かない。
どうにか城門までやってきたがそこで地面にへたり込んでしまう。
「クロ..ガネ..」
駄目だ。
こんなところで倒れてたら。
クロガネを助けないと。
動かない身体に歯がゆさを感じていると、公爵邸の方から赤い閃光が王都の外に向かっていった。
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