第10話 疾走

道なき道をひたすらに駆ける。




生えた木、転がった石、見通しの悪い視界。


あらゆるものが僕の走りを邪魔してくる。




それがなんだ。


そんなものが足を止める理由にはならない。




ゴブリン?大型のクマのような生物?人型の木の化け物?




問題にもならない。


全てかわしきってやる。






走りだした直後からヨルアが喋らない。


当然だ。


できる限り衝撃を抑えて走っているつもりだがスピードは人間のそれではない。


そのうえカーブや急停止、ジグザグの走行まで加わるのだ。意識がないほうが幾分か楽だろう。




だが意識があるのはわかっていた。僕に回された手にはずっと力が入っている。


むしろ最初よりも力が入っているようにも思える。






心配いらない。




助けてみせる。






小さな川を飛び越えて森に入る。


全体的にぬかるんでいるが関係ない。地面を踏み砕き強引に突破する。




もう森の出口は見えている。このまま突破してやる。




そして爆音とともに樹海から抜け出した。






樹海から抜け出した先はこの世界に来た時、始めて木の上からみたあの平原だった。


こっからは僕にとって未知の領域になる。




「抜けたよ!どっちに進めばいい!?」




「ぜぇ..ぜぇ..はい..このまま真っすぐ進むと..うえっ..平原に街道が、あります。..うぷっ、その道を進むと、バーレンです..」




ヨルアがだいぶ辛そうだ。少し休むべきか?




「私に気を使わないで下さい。うえっ..背負ってもらってるだけの私が休むなんてありえません」




「分かった。頑張って耐えてくれ。止まらないから」




そう言って駆けだそうとした時だった。樹海の先、山の方から咆哮が聞こえた。


そして何かが下りてくる。




それは僕を木から落としてくれたあの赤いドラゴンだった。


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