第11話 ドラゴン
山から下りてきたドラゴンは樹海を撫でるように飛ぶ。
そのまま平原にたどり着くと僕らには興味も示さずに飛び去って行った。
「あれは、まさか..!?」
ヨルアが驚いている。もしかしてあのドラゴンを知っているのだろうか。
「あのドラゴンを知っているの?」
「はい。あれは何日か前に王都を襲ったドラゴンです。その時は撃退しましたが、討伐することはできなくて..私たちはその調査依頼を受けて樹海に来たんです」
そういえば彼女達が樹海にいた理由を聞いてなかったな。そんな理由だったのか。
「あのドラゴンが向かった方向には王都とバーレンがあります。もしかしたら..」
今度はバーレンがドラゴンに襲撃されているかもしれないのか。
どちらへ行くのが正解だ?
王都か。
バーレンか。
少し考え、そして
「彼らの治療が優先だ。ヨルア、このままバーレンへ行く!」
「は、はい!」
そう言って僕はまた走り出した。
(もしバーレンにいたらその時は..)
しばらく走っていると都市の輪郭が見え始めた。
ドラゴンの姿は見えない。
(王都の方へ行ったのか?)
ドラゴンは僕より先に飛んでいった。追い越した記憶はない。
もし王都ならば一度ドラゴンを撃退しているようだし今回も大丈夫だろう。
今はそう信じるしかない。
都市の城門前に到着する。そこは人が並んでいて兵士から検査を受けていた。
とても前には進めない。
四人を担いで走ってきた僕は周りからは奇異の目で見られている。でもそんなことはどうでもいい。
どうにかして通る方法を探そうとした時
「クロガネ、城門までお願いします!私なら通れますから」
とヨルアから声をかけられた。
直ぐに並んでる人を追い越して、前へと行く。
人々から文句を言われるが気にしない。
そうして城門に近づくと一人の髭を生やした兵士に止められた。
「お前ちゃんと並んでからこい!」
その兵士から怒鳴られるがヨルアが声をかける。
「隊長さん!私です!ヨルアです」
「はっ?グレイルん所の魔法使いじゃねぇか。何やってんだ?」
「みんな怪我で意識がないんです。神官様の所へと行きたいので通して下さい!」
「何だと!?背負ってるのグレイル達かよ!」
僕が背負っているのが誰かわかると隊長と呼ばれた兵士が城門を開けてくれる。
そのまま入ろうとしたが呼び止められた。
「待て。こっちで運ぶから降ろせ」
そう言われたので担いでいた男性陣を降ろす。
ヨルア達も降ろそうとしたが僕と彼女を結んだローブが固すぎて解けない。
仕方ないので力任せに引きちぎった。
「すみません。あなたの服が..」
「気にしないで。これが一番いい使い方だったんだよ」
そのままみんなを兵士たちが運んでくれる。僕もそれについていこうとしたが止められた。
「悪いがさっきドラゴンが王都の方へ行ってな。厳戒態勢なんだ。よそ者を簡単に入れるわけにはいかない」
その言葉にヨルアが反応する。
「待って下さい!彼は私たちをここまで運んできてくれたんです。恩人を放りだすなんてこと..」
「いいんだよ、ヨルア。早く行くんだ。時間が勿体ない」
「で、でも..」
「ほら、早く」
僕が急かすことでようやくヨルアは都市の内部へと入っていく。
去っていく彼女の背中に最後に声をかける
「ヨルア!何かあったら呼んでね!」
その声を聞くとこちらを振り返り何度も頭を下げてきた。
それに向かって手を挙げて応える。
終わった..
あとはその神官様とやらがちゃんとやってくれることを願うしかない。
見届けられないのは残念だが、これ以上はできることがない。
僕に治療ができないからここまで来たんだ。僕が焦ってもしょうがない。
周りにも目を向ける。どうやら悪目立ちしてしまったのかみんなこちらを見て何か話しているようだ。
これからどうしよう?
気になるのは王都のドラゴンだが、一体どうなったのか。
そんなことを考えているとにわかに兵士達が騒ぎ出した。
何事だろうと思っていると突然、兵士の一人がこう告げた。
「全員、中に入れ!王都からドラゴンがこちらに向かっていると連絡が入った!」
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