第12話 決まってた
衛兵に押し込まれてバーレンの中に入ることができた。
城門をくぐった先には広場があり、たくさんの人がいた。平時ならさぞ賑わっているのだろう。
だが今は怯えている者、焦っている者だらけだ。
その人たちを横目にある人物を探す。それはさっき話していた隊長だ。彼ならヨルア達が何処に行ったか知ってるだろう。
彼は比較的簡単に見つけることができた。一緒に城門の中に入ってきている。
「すいません」
「なんだ!!今は後にして..あんたは..」
「ヨルア達がどこへ行ったのか教えてほしい」
そう尋ねるとあっさり教えてくれた。
「広場正面の道を真っすぐ行けば教会がある。その隣の病院に居るはずだ。迷うことはないだろう」
「ありがとう」
「いや、さっきは悪かったな。グレイル達を連れてきてくれたのに..」
「気にしてないよ。それよりもドラゴンが来るって本当?」
「..ああ。最悪だよ。今日が人生最後かもな..」
「そんなに強いの?」
「強いなんてもんじゃない。あれは天災だ。ヒトの力じゃどうにもならない」
「でも王都は撃退したんでしょ」
「それはこの国で最強の男がいるからだ。それでも仕留めきれなかった。ここへは間に合わないだろうな..」
苦笑いをして諦めたような顔をしている。
「それでも最後までこの街は守る。それが俺たちの仕事だ」
そう言って戻っていった。
隊長から教えられた道を行き、教会らしき建物を見つける。
(この隣が病院だったな)
そして教会の隣の建物へと入った。そこは簡素だが清潔感のあるロビーで受付には女性がいる。
彼女に話しかける。
「すいません」
「はい、何か御用でしょうか?」
「ここにヨルア、グレイル、キース、レリアナの四人はいる?」
「申し訳ございませんがどういったご用件でしょうか?」
「彼らをこの都市まで運んできたんだ。無事かどうか確認したい」
「わかりました。確認してみますのでお名前をお聞かせください」
「黒鉄くろがねです」
受付さんに連絡を取ってもらう。
数分後、奥の部屋からヨルアが現れた。
「クロガネ!」
僕をみるなり走って近づいてくる。その顔は涙で一杯だ。
「神官様がみんなの治療をしてくれています。もう大丈夫だって..ちゃんと目を覚ますって..」
「それはよかった」
「ありがとう..全部あなたのおかげです。本当になんとお礼を言ったらいいか..」
「その言葉だけで十分だよ」
どうやらここにはまだドラゴンが向かっていることは知らされていないようだ。
もしかしたら全部無駄になるかもしれない。
ドラゴンがこっちに迫っていて何もかも壊されるかもしれない。
そんなこと今の彼女に伝える勇気は僕にはなかった。
「それにしてもクロガネはどうやってここに?中には入れて貰えませんでしたよね」
「状況が変わってね。隊長に入れて貰ったんだ」
「そ、そうですか..」
納得はしていないような返事だ。
何か不穏なものを感じたのかもしれない。
(駄目だ。もっとうまくやれ。彼女を不安にさせるな..)
させたくないんだ
「これからどうしますか?もし行く所がなければ私たちが住んでいる家があります。部屋も余ってますし、良かったらそこに..」
「ごめんね。用事があって城門に戻らないといけないんだ。そっちを済ませてからまた来るね」
嘘をつく。
「それじゃ待ってますから。必ずまた来てくださいね!」
「うん」
踵を返して病院の出口へと向かう。
「じゃあね」
それだけ言って病院を後にした。
振り返りはしなかった。
通りを歩いて引き返す。多くの人が怯え、逃げまどっている。
隊長は天災といっていた。今の状況を見れば間違いじゃないことくらい分かる。
挑むとするなら常識を外れた力がいる。
(僕がそこまでする理由はあるのか?)
ふとそんなことを考える。
そして未来を考える。
イメージできるのは燃えるさかる都市、人々、
そして
焼け死ぬヨルア。
僕が何もしないとその未来がやってくるかもしれない。
(そんな未来は認めない。なら..)
答えはもう決まってた。
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