第13話 それぞれの戦い

「緊張してるのか?」




隊長に話しかけられる。




「い、いえ!まったくしていません!」




「無理すんな、バレバレだぞ」




そう言って隊長は笑う。




「..隊長はどうして笑っていられるんですか?」




「俺か?信じてるからだ」




「なにを?」




「あいつが勝つと」




あいつ?一体誰のことだ?




「誰のことです。ドラゴンに勝てるような冒険者や兵士はこの街にいませんよ」




もし勝てるとしたら王都にいる王国最強のあの方だけだろう。仕留めそこなってしまったようだが。




「この街の人間じゃない。どこから来たかも分からん。だがそいつは今になってドラゴンの戦い方だの弱点だのを聞いてきやがった。なんでだと思う?」




「知りませんよ、そんなこと..」




「少しは考えろよ。俺はな戦うつもりなんじゃないかと思ったんだよ。だから..知ってる限りを教えてやった」




「だからさっきまで姿が見えなかったんですね。ギルドマスターが探してましたよ」




途端に隊長の顔に驚きが走った。




「早く言えよ!!」














バーレンの冒険者ギルドで鋭い目をした初老の男性、ギルドマスターのクラウゼンが水晶に向かって話していた。




そのまましばらく対話していたが終わると天井を見上げ呟いた。




「やはり間に合わないか..」




そのまま天井を見上げているとドアが乱暴に開けられた。




「クラウゼン!王都からの救援はどうなった!?」




入ってきたのは太った体に剥げた頭の男だった。普段なら嫌らしく笑っているその顔も今は焦りに満ちている。この街の市長、ルドルフ伯爵だ。




「駄目だ。とても間に合わない。ドラゴンはもうすぐこの街に襲来する」




「ちくしょう。こうなったら城門を開けて逃がせるだけ逃がすしか..」




「それをやるならドラゴンが王都へ行った時点でやるべきだった。もう..遅い」




「だとしても何もしないわけにはいかない!俺はこの街の市長で伯爵だ!領民を守る義務がある!」




ああ、本当にこいつが市長でよかったと思う。


こいつさえ無事ならこの街はやり直せる。




「お前は自分の屋敷に戻って地下にでも潜っていろ。それぐらいあるだろ」




「お前..!俺だけ全部見捨てて助かれっていうのか!この街が終わるなら俺も死ぬ!」




「お前が死ねばこの街の再建はどうなる?死ぬとしてもお前だけは..」




そんなやり取りをしていると城門の守備隊長がやってきた。




「クラウゼンさん後にしましょうか?」




「いや、ちょうど良い。こいつを自分の屋敷まで連れていってくれ。安全な場所に監禁しろ」




「了解しました。おい、伯爵がお帰りだ。屋敷まで護衛しろ」




隊長が命じると彼について来た部下が伯爵を捕まえて引きずっていく。




「クラウゼン、貴様!やめろ!放せ!!」




伯爵は最後まで抵抗していたがそのままギルドから追い出されていった。




「すまんな。最後にこんな命令を聞いて貰って..」




「いいですよ。伯爵さえ無事ならあとは何とかなります。それよりも用事ってこれですか?」




「いや、今いる冒険者を守備に加えて貰おうとしたんだ」




「それはありがたいです。少しでも人手が欲しいですからね」




「存分に使ってくれ。皆、覚悟はできている」




そうして指示を出して貰おうとした時、遠くの方で咆哮が聞こえた。


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