第14話 ここは通さない
「よかった..」
ヨルアは病院のベッドで眠るみんなを見る。
神官様が心配いらないと言ってくれた。
これでもう大丈夫だろう。
安堵すると気が抜けてしまう。少し横になりたくなるがそういう訳にもいかない。
(クロガネが戻ってきた時のために寝てなんていられません)
思い返すのは助けてくれた黒い少年のことだ。
用事があると戻っていったが大丈夫なんだろうか?
(一緒に行くべきでしたかね..?)
なんだか去り際の背中が少し怖かった。
もう帰ってこないような、そんな背中だった。
(考えすぎですね。クロガネは黙っていなくなるような人ではないと思いますし..)
すると廊下から神官様と受付の女性が話している声が聞こえた。
「なに、ドラゴンがこちらに向かっているだと!?」
「はい、王都から連絡が。どうやら討伐に失敗ようです」
「まずいぞ。患者はそう簡単に動かせないし..」
後半は耳に入らなかった。
ドラゴンが来る。
そしてなぜかクロガネが都市の中にいる。
去り際の怖い背中。
嫌な予感がした。
そんな予感を見透かしたようにドラゴンの咆哮が響いたかと思うと直ぐに何かが吹き飛んだ音がした。
「クロガネ..?まさか..!」
「グルォォォオーー」
ドラゴンは怒っていた。
何かに急かされて山を下りてみればやたらと人がいる場所があったので軽く壊していこうと思ったら攻撃された。
手傷を負った。
屈辱だった。なぜ人間相手に逃げねばならないのか。
そして傷も癒えた今日、再び襲いにいったがまた撃退された。
あいつのせいだ、あのやたらと強い人間。
一目見て他とは違うことがわかった。
あんなのが人間にいるとは。
しかし今日も逃げ延びた。生きていればまた機会がある。
だがこの怒りだけはどうにも収まらない。
そうだ行きがけにも人がたくさん居そうな所があったな。
まさかあの強さの人間がそう何人もいるはずがない。
ちょっと滅ぼしていこう。受けた屈辱を何倍にもして返してやる。
そうしてやってきてみれば案の定だ。どいつもこいつも大した力は感じない。目に脅えがある。
人間とはやはりこうでなくてはな。
手始めに城門の兵士を焼き殺そうとブレスを溜めて
「近寄んじゃねぇ」
平原に吹き飛ばされた。
何が起きた?
なぜ吹き飛ばされた?
ドラゴンの頭の中は原因不明のこの事態を呑み込めずにいた。
どうにか身体を起こしたドラゴンが都市を見る。兵士どもじゃない。奴らも突然の事態に慌てふためいている。
一体..?
その疑問の正体は直ぐに目の前にやってきた。
それは黒い髪に黒い服を着た男だった。
「でかいトカゲが..通れると思うなよ」
「ここを通りたかったらな」
「僕を殺してからにしろ!」
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