第23話 襲撃
武器を持った集団が突進してくる。
明らかに正気じゃないし、よく見ると普通の人間とは思えない足の速さだ。
まだ距離はあるがグングン迫ってきている。
「防御態勢をとれ!伯爵が逃げる時間を稼ぐ!」
このままだと逃げきれないと判断した部隊の指揮官が指示を出す。
よく訓練された動きで陣形を作るが、いくら何でも数が違い過ぎる。
こっちが兵士とグレイル達を入れても20人ちょっとなのに対して向こうは倍以上いる。
まともにやったら押し切られる。
グレイルもそれを理解したのだろう、指揮官に提案する。
「おい!こっちには魔法使いがいる。連中の足止めをするから援護してくれ」
「分かった!全員、正面を空けろ!」
指揮官が指示を出すと兵士たちが後ろに下がる。
その動きを見たグレイルがヨルアに言う。
「ヨルア、奴らの足を止めろ!」
「分かりました!!」
ヨルアが杖を構えて呪文を詠唱する。
「
その言葉とともに放たれた魔法は地面を一瞬にして泥のように変える。
それはかなりの範囲に及び、先頭は泥に足を取られてもがいている。
便利だなぁ。
僕もヨルアに魔法を教えてもらったけど簡単なものすら出来ない。
なんだか自分に魔力が感じられないんだよね。
「練習すれば使えるようになりますから」って励まして貰ったけどホントかな?
いつか使えるといいな..
「今だ!!」
足の止まった襲撃者に一斉に矢が射かけられる。
レリアナとグレイルも矢を射かけ、何本も当てていく。
なのに襲撃者の足が止まらない。
それどころか泥沼にハマった先頭を踏みつけてこちらに迫ってきている。
「なんだ!?こいつら!!?」
「止まらないぞ!!」
矢だけではだめだ。もっと範囲の大きい攻撃でなければ。
グレイルもそれを察したのだろう。ヨルアに範囲の大きな魔法を使うように指示した。
捕まえられれば正体を聞き出せたかもしれないがこちらに被害が出ない方が優先だ。
この際、皆殺しにしても仕方ない。
彼女が再び杖を構え、詠唱する。
「
詠唱とともに放たれた炎が襲撃者を呑み込む。
肉の焼ける嫌な匂いが辺りに充満していく。
そして呪文の炎が晴れた時には生き残っている者はいなかった。
あるのは黒焦げの死体だけだ。
終わった。
だれもがそう思った時だった。黒焦げだった死体の一体がゆっくりと起き上がる。
口からは無数の血管のような管が出てきており、全身を覆いつくしていく。
そして再び立ち上がった時、そいつは無数の管が巻き付いた異形の存在と化していた。
異様な光景に全員動けないでいるとそいつはいきなり走りだし、兵士の一人に襲いかかろうとする。
「うっ、うわああー!」
突然の事態に襲い掛かられた兵士は叫ぶことしか出来ない。
その間に怪物は兵士の首に自身の管を巻き付け締め上げようとしている。
(やらせるか!)
僕は屋根から飛びだすと怪物と兵士の間に割って入った。
異形の怪物は僕の接近に何の反応も示さない。
隙だらけだ、とりあえず蹴っておこう。
「死んどけ」
回し蹴りが怪物の上半身を消し飛ばす。
残った下半身は上半身が無くなったことに気づかず、わずかに歩いたがそこまでだった。
他の死体を睨むが動き出す気配はない。
襲撃は切り抜けた。
だが誰もこの異常事態に言葉を発せずにいた。
ただ一人ヨルアを除いて、
「あの怪物の魔力は..まさか..」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます