第22話 王都への道中

僕は今、王都へ向かう馬車の中だ。


グレイル達も護衛として一緒に向かっている。 


バーレンから王都まで馬車で一日の距離だ。もう昼頃だしこのままなら安全に依頼を達成できるだろう。




僕の正面ではルドルフ伯爵が書類と格闘していた。どうやら王様への報告書を作っているみたいだ。


そんな忙しそうな伯爵に対して、




僕は窓から見える景色に気を緩めまくっていた。




「はぁー..」




揺れる車内で気の抜けたため息が出る。


ぽかぽか陽気に小鳥のさえずり、のどかで平和そのものだ。


眠くなってきそう。




そんな僕が目についたのか伯爵が持っていた書類から顔を上げた。




「見たことがないほど緩んでるな。一応、襲われる可能性もあるんだぞ」




「大丈夫だってー。何かあれば飛び出すから」




随分と間の抜けた返事が飛び出す。


こんなに平和なんだから仕方ない思うよ。




僕のその態度に伯爵は首を竦めると再び書類と向き合う。


もう邪魔はしないということだろう。


僕も目を閉じて遠慮なく寝ようとした。






しばらく静かな時間が訪れる。






だからだろうか?


その音が聞こえたのは。




何かが走るような音と護衛の兵士の怒声。




閉じていた目を開けて耳を澄ます。


伯爵も外の様子がおかしいことに気づいて馬車の窓を見る。




「一体何事だ?」




「なんだろうね?」




僕と伯爵が話していると馬車が急停止した。


そのまま扉が開かれ、焦った様子の兵士が伯爵に報告を始めた。




「伯爵様!前方よりこちらに向かってくる集団があります!」




「なに..?どうせ盗賊の類だろ。早いとこ追い払ってしまえ」




「いえ、盗賊ではありません!奴ら、どれだけ矢を射かけても止まる様子が..」




兵士が言い終わる前に馬車から出て屋根に飛び上がる。




そして前方を確認すると全力でこちらに向かって走ってくる集団がいた。


恰好は普通の市民のようだが、手に剣やら斧やらを持っている。


それだけでも脅威だが。もっとヤバいのはそいつらの表情だ。


全員、全くの無表情でおおよそ感情というものが感じられない。




(なんだ、こいつら?)




その疑問に答える者はおらず、襲撃者はどんどん近づいてきている。

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