第5話 選択

血痕を追っていくなかでゴブリンの拠点を発見した。


それは森の少し開けた場所に作られていて簡易的だが木の塀で囲まれていた。入り口らしき場所は武装した二体のゴブリンが見張っている。




(これ以上は近づけないか..)




なんとか中の様子を探りたいが、塀が邪魔で視界が遮られる。




(見張りが二体だから中にはきっとそれ以上だよな。最低でも五体以上か?)




それぐらいなら勝てるだろうか?




違う。


僕はゴブリンと戦いに来たわけじゃない。あくまで血痕を追って来ただけだ。


無理をする理由はない。




幸い、見張りがこちらに気づいた様子もない。


このまま退散させて貰おう。




そうして戻ろうとゆっくりと動き出した時だった。






突然、拠点の方が騒がしくなったかと思うと男の悲鳴が響き渡った。




(えっ、なに?)




その後に別の誰かが叫んでいるようだ。


何を言ってるかはよく聞き取れないが声の感じからして女だろうか?




しばらくその女性が叫んでいたが、その声は再び響いた悲鳴にかき消された。




(一体どうしたの..)




もしかして誰か捕まっているのだろうか?


そうだとしても僕は助けない。


自分の命が一番だ。そもそもゴブリンの数も強さも分からないのに無謀過ぎる。


悪いが自分たちでどうにかして貰おう。




そう思い足を動かして、








内部を観察するために木に登った。




(さっさと逃げればよかった..)




身体が勝手に動いてしまったんだから仕方ない。




見張りのゴブリンは上空の警戒はしていない。木の上からなら見つかりはしないはずだ。




(あくまで見るだけ。助けようなんて考えるな。無理ならあきらめる)




そんなことを自分自身に言い聞かせながら登りきると拠点を見下ろす。


内部には何軒か小屋が建っておりゴブリンたちの姿が見える。




そして連中は拠点の中央に集まっているようだ。




何だろうと思いそっちに目を向けた瞬間、ゴブリンが集まっている理由がわかった。。




中央に作られた柱に四人の人間が縛られていた。


その内の一人にゴブリンが火のついた棒を押し付けている。




聞くに耐えない悲鳴がまた上がった。ゴブリンはそれを聞いて歓声をあげている。








胸糞悪い。




僕の感情はそれだけだった。






見ず知らずの連中だ。どうなろうと知ったこっちゃない。


目を背ければいい。耳を塞いでさっさと離れればいい。






















「それが出来たら苦労しねぇんだよ」




木を鷲掴みにしてそのまま根本から引きちぎる。


音に気づいた見張りの連中が何事かとこちらを見るが知ったことか。






もう遅い。






大きく振りかぶると引きちぎった木を見張りへと投げつけた。


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