第6話 勝利

投げつけられた木が見張りに直撃し、そのまま轟音を立てて地面に衝突した。


どうやら死ぬ前に中のゴブリンに知らせようとしたみたいだがもうそんな必要はない。


今の音で敵襲に気づいたはずだ。




一応、作戦はある。このまま投石ならぬ投木をしまくるのだ。弾なら辺りに無限にある。


それにさっきので見張りは倒せた。ならば他のゴブリンも同じように倒せるだろう。


もしこれで倒せない相手がいたらその時は混乱している隙に捕まっている人たちを連れて走って逃げる。




もう後には引けない。


やってやる。








武装した複数のゴブリンがでてくる。一体何が起こったのかまだ理解できてないようだ。




直ぐに二投目の木を引きちぎるとそのまま投げつける。


最初と同じように轟音を立てて地面に衝突したがさっきよりゴブリンの数が多かったせいで何体か仕留め損なう。




そのせいでこっちに気づかれた。大声をだしてこちらを指差している。敵がいると言ってるのだろう。




直ぐに三投目を投げて黙らせるが、それ以降ゴブリンがなかなか出てこない。


きっと狙い打ちにされると思って拠点の中で警戒している。




ならばと今度は塀に向かって投げる。


塀を破壊して隠れていられないようにしてやる。




そのまま投げ続けると所々で矢が飛んできた。だが闇雲に射たれただけで当たりはしない。




五~六回投げた所で塀が半壊した。拠点の内部が晒される。すると小屋がまだ健在だったのでこちらも破壊する。




これでもう隠れる場所はない。


一旦、投げるのをやめてゴブリンたちの様子を見る。




攻撃を始めて一時間も経っていないがもはやゴブリンの拠点は見る陰もないほど破壊されていた。


ゴブリンたちも今の攻撃で大多数がやられたようだ。


生き残ったゴブリンも大なり小なり傷を負って逃げだそうとしている。




ダメ押しにもう一本投げつけておく。


それで今度こそ生き残ったゴブリンは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。




「勝った..」




取り敢えず作戦通りに上手くいった。


だが勝利の余韻に浸っている余裕はない。


もしかしたら逃げて行った奴らが戻って来るかもしれない。


早いとこ助け出してここから離れよう。




そう思い捕らわれている人たちの所に向かおうとした時だった。


崩壊した小屋の陰に隠れていたのか、まだ一体ゴブリンが残っていた。手には剣を持っている。


位置としては僕よりも捕まってる人たちに近い。




そいつは僕がどこに向かっているのか理解したようで剣を振りかざし捕まってる人たちの所へ走り始めた。




「あの野郎!」




僕には勝てないと考えて捕まってる人たちを殺すつもりだ。




完全に出遅れた。距離も奴の方が近い。


このままじゃ殺されてしまう。






ふざけんな。


ここまでやって諦めるかよ。




信じろ、この身体を。






足に力を入れ、思い切り地面を踏み込む。


異次元の脚力によって爆発でも起こったかのように地面が抉れた。




そしてゴブリンが剣を振り下ろすよりも早く、奴の目の前に現れる。


まるで瞬間移動でもしたような速度だ。ゴブリンもポカンとしている。




そのまま隙だらけの顔面を殴る。炸裂音と共に頭部が吹き飛んだ。








周りを確認するが残っていたのは今ので最後だろう。




今度こそ僕の勝利だ。




そして捕らわれている人たちに言った。




「助けにきた」

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