第161話 いつかの未来で
暗い闇の中にいた――
起きているのか、死んでいるのか、自分自身すらも分からない闇の中――
そんな中に僅かな輝きが灯った――
必死でそれに手を伸ばす――
その先で待っていてくれている気がした――
やがて輝きが強くなり私は――
◆
「やっと帰って来てくれましたね」
意識を取り戻すとそんな声が聞こえてきた。
ずっとずっと...なによりも私の中で輝いていた声。
二度と聞く事はないと思っていたその声の主に尋ねる。
「これは...?」
彼女は微笑んで答えた。
「あれからどれぐらい経ったでしょうか...あなたが知っている人達はもう居ません。みんな生きて...生き抜いて...時間の流れの中に去ってしまいました」
少しだけ寂しそうにしながら彼女は続けて言う。
「色んな事がありましたよ。嬉しい事も、悲しい事も...あなたに話したい事が沢山あるんです」
「...」
その言葉に俯いて黙る。
果たして自分にそれを聞く資格があるのだろうか?
「ありますよ」
そうしているとまるで私の考えを見透かしたかのように彼女は言った。
「だってあなたが守ってくれた未来なんですから」
そう言って私の頬に手を添え、俯いた顔を上げさせる。彼女と目が合った。
私の全てを捕らえて離さなかった、輝く白銀が見つめてくる。
そして、私に対してこう言った。
「お帰りなさい、メイヅキ」
彼女が私を抱き締めてくれる。
私も彼女を抱き締め返して言った。
「ただいま...セストリア...」
与えられたのは最強の肉体でした エビス @ebisu01
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