第11話 女ポリス

 俺は聞こえた方向を振り向く。

 そこにはショートカットの女性警察官が怒った表情でこちらに歩み寄っていた。


 やばっ!


 俺はベンチから直ぐに立ち上がり、駆け出した。


「あ! 君! 待ちなさい!!」


 あ! これ反射的に逃げちゃったけど大丈夫かな!! もしかして逃げない方が良かったんじゃない!?

 そんな事を考えていると、


「ゔぇっ!!」


 首元の襟を掴まれ、後ろに倒される。

 女性警察官は俺の腕を取り、関節を決める。


「イテテテテ!!」

 あ、でもおっぱいの感触が…

 いや!! やっぱ痛い!! ごめんなさい!!



「何で逃げたの!! ちょっと署まで同行してもらうよ!!」

「ま、待って!? すみません!! 少し事情があったんです!!」

 俺がそう言うと、女性警察官は私の顔をジーッと真偽を確かめる様に見る。


「………はぁ。分かった。じゃあ少し話を聞かせて貰うよ?」

「は、はい」


 隼人は女性警察官に連れられ、駅前まで戻った。




「へぇ。そういう訳だったのね」

 俺は掻い摘んで今の状況を話した。


 女性警察官は俺の話を聞くと、納得したかの様に、何かメモを取っている。


「まぁ、そういう訳だったなら、しょうがない! 私が家まで送ってあげるよ」

「え! 良いんですか!?」

「もちろん!! 此処で寝泊まりさせるのは流石にダメだし…。署で預かるにしてもちゃんとした理由がないとだから…」

 女性警察官は頬をぽりぽりと掻きながら、笑顔で答える。


 おぉ。此処に女神がおる。

 俺は思わず、手を合わせた。


「ちょっと! ほら! 行くよ!」

 女性警察官は少し頬を赤く染める。恥ずかしがっている様だ。


 そして俺は女性警察官が乗ってきたであろうパトカーの後部座席に座る。

 こんな事でパトカーに乗るとは…結構良い経験かも。


「えっと、風裂君の家は何処なのか教えてもらって良い?」

「あ、分かりました。えっと…」

 俺は女性警察官に住所を教える。


「へぇー。結構遠いね。じゃあ早く着く為に制限速度ギリギリで行くよ!!」


 ブオォォォン


 ひっ!?


 え、これ本当に制限速度守ってる?






「はーい、着いたよー」

 窓の外を見ると、そこにはいつもの我が家が。


「ありがとうございます!」

「いいのいいの! 気にしないで! これからは電車寝過ごさないようにね〜」

 女性警察官が手を振る。俺も手を振り返すと、にこやかに笑い帰って行った。


 良い人だったなぁ。

 俺がしみじみと物思いにふけてると、家から母親が出てくる。


 俺はこの後、"アンタどうしたの!?" と問い詰められる。此処は居間からだと見えない。恐らく女性の声が聞こえてきたからだろう。

俺が"何でもない"と突っぱねると、何度もしつこく聞いてくるので、"ただの友達だよ"と答えると母が銅像の様に固まった。


 それを好機だと思った俺は、そそくさと家に入り、部屋に戻った。


 友達と言うだけでこんなに驚かれるとは思ってなかったな…。

 俺は部屋の中で少しへこんだ。

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