第2話 可愛すぎる

「え、えっと…」

 女性記者さんは顔を赤らめる。


「顔真っ赤、めっちゃ照れてる。可愛い。はっ! なるほど、俺の事をキュン死させる気か! 負けない! 俺は負けないぞ!」


 どうしたんですか?


「あ…、あぅ…」

 女性記者さんは変な声を挙げながら、下を向いている。


 ってあれ? …俺今なんて言った?


「あ、あの…その様な事を言って頂き、とても嬉しいです…。ですけど、い、今はインタビューの方に集中を…」


 や、ややややっちまったー!!?!?

 頭で考えてたつもりが口に出ているなんて!! そういうのは二次元だけで十分なんだよ!!

 頭を抱えて、膝を着く。


「す、すみません…今のは忘れて貰えると嬉しいです…」

 これが学校の奴にバレたら、陰キャの俺からしたらイジメの的になりかねない。

 いや、イジメがどうこうよりも何より…


 恥ずかしい…!!


 俺は頭を地面につける。


「…ふふっ。分かりました」

 女性記者さんは笑ってそれを受け入れる。


 良かった! なんて良い人なんだ!!

 まぁ、俺のこの姿があまりに惨めだったからっていうのもあるかもだけど…。


「ただし、また活躍してインタビューされる時は私を優先してくださいよ?」


 女性記者さんは、上目遣いで笑いながら見つめてくる。その上目遣いたまらんわ。可愛すぎて、悶え死にそうになるわ。


「あの…いいですか?」

 コテンと傾げた首はまるで


「殺しに来てる?」

 可愛い過ぎる。もしかしてこの人は俺の事をキュン死させようとしてるのではないか?


「あ、あの? …いいですか?」

「え、はい」

「ではその時はよろしくお願いします!」

 女性記者さんは礼をすると走り去って行った。


 ん?…あ、返事しちゃった。

 ま、いいか。今度会ったら連絡先を聞こう。そう思っていたら、ふと気づく。


「…どうやって会うんだ?」

 あの人の名前は? 何処に住んでる? 何処の会社に勤めてる?


「何も分からないじゃん…」

 あ、あの人に会う為にはどうしたら良いんだ…。




 初恋は叶わない。

 よく言われている言葉だ。


 頑張って、頑張って、頑張った結果、簡単に振られる。だが、年を取ればそれが良い思い出だったと思える、と隣のお爺さんが言っていた。


 振られて良い思い出…ね。



「いや! 振られるのが良い思い出な訳あるか!! 俺は絶対叶えてやる!! 絶対にあの人を彼女にしてみせるぞー!!」


 俺の初恋はまだ始まったばかりだ!! こんな所で諦めてたまるか!!




 グラウンドの横で突然叫ぶ風裂 隼人。今日の試合の主役でありながら、本当はサッカー初心者。そんな彼は、女性記者と会う為にこれからとんでもない成長をみせる。


 これは、今まで陰キャだった男が成り上がる物語である。

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