第9話 チアの女子

「はぁ…イテテテテ」

 柔軟が大事だからって先輩押しすぎだよ〜。

 彼女は、お婆ちゃんの様に腰を叩く。


 彼女の名前は、小野寺おのでら 紗雪さゆき。チアリーディング部の1年生だ。今日は練習前、後にきつめの柔軟を行い、腰を痛めていた。そして先程やっと練習後のミーティングが終わり、今は帰宅途中だ。


「ん〜!! チアって今まで憧れだったからなぁ、とりあえずは柔軟頑張るぞ!!」

 紗雪は両手を上げ、背伸びする。その後、拳を握り1人で努力する決意をする。


 ガシャン!!


「えっ!?」

 帰り道の隣。サッカーグラウンドの方から大きな音が聞こえる。


(何だろう今の音…)


 紗雪は道から外れ、林を抜ける。そして恐る恐るとグラウンドを覗く。


(誰かいる?)


 グラウンドの真ん中に誰かが立っている事に気づく。

 この時間になると、いつもどの部活も大体終わる時間。


 紗雪は怪しい人かもしれないと気になり、立っている人の顔を見る為、近くに寄り、前に回る。


(アレはサッカーボール?)

 紗雪は回る途中に足元に転がっている物がサッカーボールである事に気づいた。


(てことはサッカー部の人かな?)

 やっとの思いで、紗雪は前に回るとそこに居たのは、


 ユニフォームをボロボロにさせ、何か悔しそうな表情をしている男子。



「クソがっ!!」


 ビクッ!

 その人は突然声を挙げ、今にも泣きそうな顔で空を見上げる。



(…何か悔しかった事でもあったのかな)

 紗雪はその男子のその一言、姿に、絶対成し遂げる、そう言わんばかりの気持ちを感じた。


(…私も頑張ろう)

 紗雪は静かにバレない様にそこから離れる。

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