第6話 電車の中で

「はっ!!」

 目を覚まし、身体を起こす。


 机に、漫画本、普通の学校のカバン。

 何だ俺の部屋か…って何言ってんだ俺は。


 俺の部屋に決まってるだろ。逆にどこで寝るって言うんだよ。俺は階段を降りて洗面所へ行き、顔を洗う。


 よし、髪をかき上げて…って髪がない? あ、そっか、髪切ったんだっけ。


 バシャバシャバシャ



 ふぅ。スッキリしたな。


 ん?


 髪を…切った? どこで? "チェリー"でだ。


 何か…何か忘れてる様な。


 俺は…




 まぁ、忘れてるから大したことではないだろ。

 そそくさと学校の準備をして家から出た。






「…なんだ?」

 電車でいつも通り端っこに座っていると、妙に視線を集めてる事に気づく。

 しかもだ、いつもなら俺の隣に毎回決まった駅で中年のおじさんが座るのに、今日に限って綺麗な若いお姉さんが座ってきた。


 す、すごい脚とか当たってるよ…!!


 俺がお姉さんの方を見ると、一瞬目が合う。するとお姉さんは少し笑い、さらに脚を擦り付けてくる。


 な、ななななにっ!?!


 俺はあまりの出来事に動揺を隠さなくて、抱えていたカバンを落とす。


「す、すみません!」

 カバンを拾おうと手を伸ばす。すると、


「どうぞ」

 と美人なOLの様な格好をしている人が、髪をかき上げながらカバンを拾ってくれる。


「あ、ありが…っ!!?」

「あら?」

 俺はそのカバンをぶんどる様に取ると、カバンを抱え込み、下を向く。


 な、何で…



 ワイシャツのボタンそんなに開いてるの…。

 屈んでカバンを取ってくれたのはありがたかった…だけどさ、めちゃくちゃ谷間見えてましたよ!?


 俺はそんなこと言える訳もなく、電車の中で悶々としながら身体を硬直させ、学校まで行った。

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