第29話 記者さん到来

「風裂! 今日の調子はどうだ?」

「まぁ、ぼちぼちって所ですかね」

「今日は取材があるんだぜ! 気合い入れていこうぜ!」

 小野寺さんが、意気揚々と俺に話しかけてくる。


 いつも通り、この人は凄い元気だなぁ。


 俺はこの1ヶ月間、学校の練習も凄く頑張った。

 シュート練習から、裏への飛び出し、1人でもDFを突破するドリブル力、とにかく点を取る為、もとい、あの記者さんに会う為に努力した。


 ピッ!


「集合ー!」

 監督から集合の合図がかかる。


「よーし、お前らいつも通りランニングから始めろ」

「「「はい!!」」」

 部員はこの1ヶ月で殆どが戻ってきた。

 その為なのか、練習もいつも以上にキツく感じる。


「あと、今日は記者の方が来られる。質問されたら、練習中でも何でも答えてやるんだぞ」


 ふー…まぁ、今日も上手くなる為に頑張るか!


 俺は部員が集まる、ランニングする列へと並んだ。


 ◇


「ふぅ…着いた〜!」

「清水さん、声大きいですよ…」


 私は2年後輩の田中たなかと風林高校へと訪れていた。


「しょうがないじゃない。ここまで来るのに職場から2時間かかってるのよ? そりゃこんな声にもなるって。とりあえず、サッカー部の方は行ってみようか」

 私はグラウンドの方にはを進める。


「ちょっと先輩! 学校の方に挨拶とかって…はぁ、もう自分がやっておきます」

 田中はそう言うと、仕方がないとでも言いたげな表情で校舎へと向かった。


 ふふっ、良い後輩だ。私は早く才能の原石を見つけないといけないからね!




 サッカーグラウンド。


「へぇ〜、やっぱ強豪校。部員が多いな〜」

 私は練習風景を見ながら、風林高校の監督の所まで向かう。


「おらぁ! 風裂来いやぁ!!」

「行きます!!」


「ん?」

 私は聞こえてきた名前に既視感を覚え、立ち止まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る