第30話 実力

「行きます!!」

 俺はDFにドリブルしながら向かっていく。


 今、3対3のミニゲームを行っている。

 俺はDFに左にフェイントを掛け、足が開いた瞬間を狙って右にいる味方にパスを出す。


「なっ!?」

 DFが驚きの声を上げ、背後を振り返る。


 よし。ここだ。

 俺はその瞬間を見逃さず、相手のDFの視界に入らない様に裏を取る。


 そして味方からパスを貰う、所謂ワンツーというやつだ。


 そして前を見た時には、もうGKしか相手がいない。


 もうそこからは俺の独壇場だった。

 俺の毎朝鍛えられた、脚力、スタミナは、今までの練習がなかったかの様なスピードを見せる。


 DFは俺の脚に追いつく事が出来ない。GKが飛び出してきたのを見て、俺は冷静にループシュートを決めた。


「よしっ!」

 俺はガッツポーズを決めると、


「よっしゃ!」

「ナイス!」

 と、味方からハイタッチを求められる。


 俺はそれに感動を覚えながらも、パチンッと音を鳴らした。


 ◇


「風裂君って…あの子だよね?」

 私は頭の中で決勝点を決めた、1人の1年生を頭に浮かべる。


「…何処にもいないけど?」

 私がグラウンドを見ながらそう思っていると、


「風裂ー!! ドリブルで全員抜いちまえー!!」


 練習風景を横から見ている、部員から元気な声が聞こえてくる。


 ドリブルで抜く? って言う事は、あれが風裂君?

 ボール保持者は、前の試合では見た事がなかった選手がいる。


 前見た時はもっと暗い印象だったんだけど…画面映えする見た目になってる!!


 何か前よりも、自信がある様な…身体がガッチリしてるみたい。


 私は風裂君のプレイを観察する。


 うん…上手い。あそこからあんなに小さいスペースを通してパス、その後DFが目を離した隙を見逃さず、前に行ってパスを貰う。


 しかも、その後DFを寄せ付けないあのスピード、GKに対して冷静な対処をしてループシュート。


「良かった…見つけた!!」


 あの子がこれからのサッカー界の"光"だ!!

 私はそう確信した。

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