第31話 何故こんな所に…

「ふぅ」

 俺はグラウンド脇にある、水筒に手をかける。


 今日も上手く出来たな。GKの反応にも上手く対応出来たし。


「もう少しフィジカル面を鍛えた方が、ボールの保持も安定しそうな感じはするな」


 俺がこれからどうすればサッカーが上手くなるかを考えていると、後ろから声をかけられる。


「あの、すみません」


 ん? 女子か?


 最近の俺は特に女子に話しかけられるようになった。その為か、会話も何も噛まずに出来る様になった。


 ついでに、家にすごい美人の女の人がいるし。


 免疫がついたって事なのかな、ふっ…。

 俺はそんな事を頭に思い浮かべ、調子に乗りながら後ろを振り向く。


「はい、何ですか?」

 俺は極力歯を見せる様に笑う。

 何故歯を見せたのかというと、これはモテ男になる為のテクニックらしい。


 これはチェリーの店長"チャラさん"直伝の、初対面殺しスマイルである。

 これをする事によって相手の自分に対しての初対面のイメージが最高潮になるらしい。


 これをすれば、大体の女の子はイチコロだ! って言ってたけど…。


 そして


 俺は固まった。


 そこに居たのは、この前俺の事を取材してくれた記者さんだった。


 ◇


「あ、いたいた」

 私は風裂君を見つける。


 風裂君は水筒に口をつける途中だ。


 今、話しかけるのは申し訳ないな…。飲み物を飲み終わったはにしようかな。


 私は風裂君の後ろで話しかけるタイミングを見計らっていると、ブツブツと風裂君が何かを言っている事に気づく。


「もう少しフィジカル面を鍛えた方が、ボールの保持も安定しそうな感じはするな」


 へぇ…さっきのプレイではまだ納得してないって事かな…。


 あんなプレイ出来る高校生が全国でどれくらいいるか…それなのに風裂君は…。


 風裂君は何処を目指して、こんなに頑張っているのだろう? 私はふとそんな事を思うと、風裂君へと話しかけた。

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