第17話 勝負の行方は

「じゃあ、行きますよ?」

 俺が言い、ボールを蹴り出す。


「ッ!?」

 幸田さんは焦る様にして、俺の元へ詰めてくる。


 …やばい。どうしよう。どうやって切り抜ければ良いのか分からない。


 俺が大会で残した結果は、コーナーキックからのダイビングヘッド。


 ハッキリ言う。

 ドリブルで抜く方法が分からん。


 こういうのってテレビで見たものを真似すればいいのかな?


 そんな事を思っている内に、幸田さんがすぐ目の前まで近づく。


「くっ!!」

 俺は幸田さんに背中を向け、ボールを取られない様にする。


「な、なんだよ! 大した事ねーじゃねーか!!」

 幸田さんの口角が上がる。


 どうするどうするどうする!? いや、もうここまで来たらこんな事考えても仕方ない!


 もう…どうにでもなれ…。

 そう思って俺は強張らせていた身体の力を抜く。


「おっ…と」

 幸田さんが俺に張り付いてたせいか、バランスを崩す。


 今だっ!


「ここ…!」

 俺は身体をターンさせて、幸田さんの横を抜ける。


「テメェッ!?」

 幸田さんは、負けじと俺についてくる。やはり強豪校のレギュラー。これぐらいじゃ抜けないか。


 なら!!


「ッ! なめんなっ!!」

 俺はそこから右足を振り上げる。幸田さんはスライディングして俺のシュートを防ごうとする。


「ここで…こう!!」

 俺はそこでフェイントをかけ、シュートせずに幸田さんのスライディングを左へと避ける。


「なっ!?」

 幸田さんの驚愕してる表情が見える。


 俺はゴールの前まで行って、無人のゴールへとボールを蹴る。


 ボールはゴールのネットを揺らした。


 それは偶然の産物だったかもしれない。

 先輩の油断で成功したかもしれない。


 それでも…勝負に勝ったという事実。






「…しゃあっ!!」


 隼人は拳を握りしめて、叫んだ。

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