第18話 もっと…優しくして…

「い、今のは偶々だ!! もう一度やれば俺が!!」

 幸田さんが俺に近づいてくる。


「幸田! やめろ!」

「渡辺…」

 幸田さんが俺に向かって手を出す直前、渡辺キャプテンが俺と幸田さんの間に入る。



「お前…試合でもそんな事を言えるのかよ」

「…」

「大会の決勝の試合で! そんな事言えんのかよ!!」

「…うるせぇな」

 幸田さんはグラウンドから出て、部室へと向かった。



「すまないな、風裂」

「い、いえ」

 渡辺キャプテンは俺に謝ってくる。


「……アイツ、ああ見えて決勝の為に俺達の中でも1、2位を争うぐらい練習やってたんだよ。でも決勝の時、試合に出れなかった。」

 渡辺キャプテンは、幸田さんの気持ちになっているのか悔しそうな表情をしている。


「しかも、その時幸田の代わりに出た風裂が得点を決め、最終的にはそれが決勝点になった…まぁ、アイツなりに風裂を見極めたかったんだと思う」


 み、見極めるにもやり方があるでしょ!? 胸ぐら掴まれたんですけど!?


「ま、まぁ、なんだ、やり方には問題はあると思うが…」

 渡辺キャプテンの目が泳ぐ。


 ですよね!! 確認するにも、もっと優しく出来ましたよね!!




 キーン コーン カーン コーン

 学校の始業の鐘が鳴る。



「おっと…もう授業か。お前ら! 早く着替えて教室に行くぞ!! これでお前らが遅れたら俺が監督に怒られるんだからな!!」

 グラウンドの周りにいた部員達が少し笑いながら部室へと走る。


「大輝さんが言ってますからね! 早く行かないと!」

「そうだな! お前ら! 早く行け!!」

「まぁ…大輝の怒られてる姿を見たい気もするが…」

「おい達也! 聞こえてるぞ!!」

 渡辺キャプテンが叫ぶ。


 あれ…あの人達ってレギュラーの…


「おい! 風裂! 早く行かないとお前も遅れるぞ!」

「は、はい!」



 俺はその人達の後に部室に向かうと、さっさと着替えて教室に向かった。

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