第8話 俺だって怒る時もある
「はぁ…なんか今日は大変だったなぁ」
放課後、トイレの個室の中で呟く。
朝のホームルームの後、俺は先生には質問攻めにあった。
わざわざ職員室まで行って、俺の個人情報が書かれている物を持ってきてまで質問したのだから、相当疑っていた筈だ。
しかもその後は…
「か、風裂は彼女とかいるのか…?」
とか謎の質問までしてきて、それを聞いてた女子達と先生の喧嘩が始まって朝のホームルームがそれで潰れてしまった…。
それ以降の授業も先生が来るなり、他のクラスの子か? なんて聞かれる所から始まる為、いつも以上に話をして疲れた…。
これまで学校で言葉を発する時なんて、返事をする時か、発表する時、あとは雑用を頼まれる時ぐらいか?
まぁ、中々充実してたんじゃないか? 髪型が変わるだけで、こんなに変わるとは思ってなかったな!
女子との会話でも吃らなくなってきたし、これはあの記者さんと会った時には完璧に会話出来そうだな!
俺はトイレの個室で1人、高笑いをした。
「…よしっと、やっと部活だ」
隼人は部室で練習着に着替え、スパイクを履いてグラウンドへ向かった。
まず、あの記者さんと会う為には俺が試合に出て活躍しないといけない…。
つまり、
キュッキュッ
「おーい、1年。まだ終わんねーのかー?」
「も、もう少しです!」
このボール磨きを卒業しないといけない。
入学した直後は、簡単なパス練習やシュート練習等やらせて貰っていた。しかし、大会が近づくにつれ、練習はベンチメンバー中心になっていった。
あの時の俺はラッキーって思ってたけど、今では地獄でしかない!!
ははっ、そんな世の中甘くないってことか。
試合で偶々、点数を決めただけ。技術下、スタミナ下、筋力下の下。こんな素人陰キャ1年をいきなりレギュラーと同じメニューする訳ないか…。
俺は大きな溜息を吐き、下を向く。
いや!! これを早く終わらせたら練習に参加させて貰えるかも!! しかも今はみんな入院してて人数は少ない!
俺は全力でボール磨きを終わらせる。
「先輩! 終わりました!!」
「ん? おう、じゃあ…」
ダンッ
え?
「今度はこっち頼むわ」
俺の前には大きな箱に沢山のスパイクが。
「皆んなのスパイクの替えだ。頼んだぞ」
先輩はそう言って、俺から離れて行った。
……。
「おおおぉぉぉーーーっ!!!」
俺は泣きながら、グラウンドの隅で四つん這いになり、スパイクのありとあらゆる汚れをとった。
俺がスパイクを綺麗にした頃には、練習が終わっていた。
「……ッ!!」
隼人のユニフォームはスパイクのドロで汚れていた。ゆっくりとした動きでグラウンドの真ん中に立つ。そして近くにあったボールのカゴを蹴る。
「クソがっ!!」
隼人は悔しそうな顔で真っ暗になった空を見上げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます