第10話 寝過ごし
「…何やってんだ俺は。早く片付けよ」
俺は蹴ったカゴの中に入っていたサッカーボールを集める。
イラついててもしょうがない。現状、チームにとって俺の存在はこんなもんだ…。髪型が変わっただけで変わると思ってたなんて…俺もバカだよな。これだから陰キャなんだよ…。
隼人は現実を叩きつけられた。
…ふん。こんな簡単に上手くいってたら陰キャなんてやってないか。
俺は後片付けを終わらせて、部室の鍵を閉めて家に帰った。
ガタンゴトン
走る電車の中、俺は考える。
見た目を変えたからって、俺の中身が変わった訳じゃない。見た目が変わったから中身も変わったと錯覚していた。そんな俺にあの記者さんは、俺に惚れてくれるか?
いや…そんなの考えても仕方がないか。
まず自分のクソッタレな性格を変えてから、考えるか。
隼人は1人、電車の座席に座りながら笑った。
プシューッ
「お客さん! 起きてください!」
「え?」
俺の目の前には制服を着た駅員さんが居た。
どうやら俺は寝過ごして、終点まで来てしまったらしい。
これはやってしまった。とりあえず親に連絡しないと。
俺は電車から降りて、ホームで親に電話をかける。
本当なら終点まで寝過ごしたと伝えたい所だが、ウチには車が1台あるがそれは夜勤の父が使っている為、使う事が出来ない。
俺の家は貧乏ではないが、裕福でもない。あまり親に心配させない方が良いと判断した俺は、今日は友達の家に泊まるから帰らないと伝える。
「ふぅ。最近こんな事ばっかだなぁ」
駅の前のベンチに深く腰掛ける。
そして俺は上を見上げて、星空を見た。
……綺麗だなぁ。
星は好きだ。見てるだけで心が落ち着く。
星空は何故、こんなにも心惹かれるのだろうか。星空には謎の魅力があるな。
まさにあの記者さんの様な魅力だな。
俺は真っ暗闇の中、ニヤけながら1人頷く。
「ちょっとそこの君!! こんな時間に何してるの!!」
凛とした声が響いた。
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