第3.5話 吹き始めのそよ風と……?!


「ただいまー」

 奥からお帰り~と父親の声がした。母さんは?と聞くと仕事で遅くなるらしいと返ってくる。

 着替えてすぐ夕食だ。レトルトで煮たハンバーグの大豆合成を示すマークが程よく黒みがかっていた。風間さんは今日はビニールがうまく破れたことに満足した。

 テレビは7時になりニュースが始まっていた。公共放送のニュースはつまらないので、色々話題になっているニュースが社会のテストに出る範囲ではないとだけ確認して食事を続けた。

「そういえば、部活、慣れたかい?」

 気がつけば、この話になっていた。押し合いへし合う政治家のヤジを背景に、まあ、ね。と答える。テレビでは運が悪ければ廃止になるかもしれない省庁の役人が悲しそうな顔をしていた。そちらに少し意識を傾けた風間さんは分かる気がすると思った。ゲーム終了の時にレアアイテムとか失う時の気持ち、こんな風だろうなあと。

「そういえば、部活だけど、中身聞いてなかったけども、何をやっているんだい?」

 言われて見れば、あまりしっかりと話をしていなかっと風間さんはただ、飛行機を飛ばす部活かな、と、だけ答えた。

一瞬、父親の眉が動いた。

「飛行機と言っても、いろいろあるし、どんな飛行機だい?」

 テレビのニュースが都合よく切り替わる。映像には青い単発戦闘機ぐ映る。

「……次のニュースです。我が国を半世紀にわたり守り抜いてきたF-2、その最後の時が近づいて参りました……」

 風間さんは、あ、とまだ口にハンバーグを入れたまま声を出した。あわてて飲み込み、あんな感じ?と言うのを風間さんの父は黙って見ていた。

 テレビではF-2が生まれてからのここ半世紀の戦闘機開発の推移が流れてきた。第五世代戦闘機、2020年代の初期型ドローン、それから、風間さんと同い年ぐらいのF-3戦闘機へと話が映る中で、様々な戦闘機が映し出される。

「えーと、違う……」

 春戦争の時のバルト海を背景に飛EF-2000だった。

「これも……」

パリ近郊に核を抱いたまま落ちるラファールにも駄目押しする。

「こ……れ……?」

 アメリカ南部の白人至上主義団体NKKを空爆するF/A-18Eが映し出されていた。風間さんの父は、口から自然と「スーパーホーネット」という言葉か漏れる、

「スーパー……?」

「二種類あるんだ。」父は言った?「小さくて古いほうと、大きくて新しいやつ」

 そういえば、そんな話を聞いたことがある。と風間さんは思った。そんな事を言った風間さんは映像の中で奇妙な三角棒の集団の頭上を低空飛行する機体について、なんだかふとましくて、かくかくする気がする。そんな事を言った。

「じゃあ、レガシーか……」と言った後、ため息に混じった聞き取れないほど小さな声で「また妙な趣味を……」と言った。

「うん。なんか、脳にばっちり来た。」

 脳にばっちり来た。つまりは、本能だ。後付けの理性で言語化出来るものではない何かが脳、諸神経、体内環境の応答の自動並列処理の回答として「びびっときた」と纏めたという事だ。その意味を理解しても、風間さんのお父さんは表示用一つ変えず「へー」と無関心層に回答した。

 風間さんとのその話はそこで終わった。風間さんはそのまま部屋にいく。それを見計らい、風間さんのお父さんはため息をついた。

 それから無言で皿洗いをする。そして、部屋に帰る。今日は深夜のバイトがない。それが怨めしかった。

(血は争えない……のかなあ?)

 暗がりから風間さんには見せたことがない写真を引っ張りだして、その青い垂直尾翼を懐かしそうに眺めた。そして、再び暗がりの深淵に沈め、忘れることにした。


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