第5話 風間さんと荒野の決闘?!【6】

『よし、始まりだ……』

空に飛び出し、演算が始まるなり真希は元気良くそう言った。

『ブラウ、トレイル(後方)ターゲットは任せた。私はリード(前)をやる。』

『ウィルコ』

返答を聞き、真希の操るF/A-18Cは加速する。タンク三本のうち、初撃と共に捨てる翼下タンクの燃料を豪快にぶちまけたアフターバーナーは本来亜音速の加速が遅い機体を勢いよく加速する。高度は三万、これ以上高くなると相手のミサイルがよく飛び、こちらがレーダーで捉えられる距離超える位置からでも攻撃が届いてしまう。

『ギリギリまで接近する。3万なら20マイルまで撃たれなかったら撃つ。』

互いに機体は接近する。そして残り20を切り、18マイルで真希の「FOX3」コールが入る。機体は相手が向いた方向と反対方向に向き、垂直に近い角度で降下する。

翼下の増槽を投棄して胴体下のものの利用をスタート

真希は、予定通り増槽を捨てる。事前に左膝直上の投下ステーション選択にて内側左右のパイロンの位置が点灯しているのを確認し、左膝横にあるセレクションジェッションスイッチをSTORESまで回してあるのを確認、ボタンを押す。増槽が二つ、両翼から剥がれて自由落下する。その間も操縦桿は少しづつ引いている

『速度は650、660、670……』

風間さんが680を言い終わった後、ゆっくりと真希は旋回上昇を開始する。丁度イルゼが先程の自分達と同じ様に円を描いて降下する所だった。敵は仕掛けてきたかと真希は聴いてきて、風間さんは相手の動きを確認して、代わりに『相手は逃げていく。』と語る。敵は撃ったが、イルゼは撃っていない。

『初手で突っ込む程バカじゃなかったか。』

感情を垂れ流しながら次のミサイルを射る用意をする。今度は7000フィート、13マイルから撃ち込む。当たらない。ミサイルが敵の方向に舵を切ると同時に開いてと反対方向に離脱する。

『どうします?仕掛けますか?』イルゼの問いに真希は、『ああ、やる。』と答え、それからミラー越しに風間さんにアイコンタクトした。

『風間、いいか?次のターンから仕掛けるぞ。だから、前の敵の距離を報告してくれ……いいな。』

風間さんは自分が意図して起こしたものでない激しく上下が入れ替わる中で『は、はい……』と返答する。真希は、少し意地悪そうな声で、『よし、いくぞ!』と言い、再び戦場に頭を向ける。同じように戻って来た相手に向き合う。それから、右手に相手を見るように起動し、ミサイルを撃つと同時に右に舵を切る用意をする。敵との距離、15マイルと風間は叫んだ。

『いくぞ!さあ、ついてこい。』

『ま、待ってください!それは……』レーダー画面に写されたカーソルの動きに気付いて風間さんが声を上げた。真希が志向していたのは、後ろの、イルゼとやり合っていた敵だった。

『予定内だよ。』真希は悪いことをしている声で言った。『それに、ももう遅い。』三発目のAIM-120は、その瞬間機体を離れた。

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飛行部の風間さん♪ ~女子高生戦闘機乗り始めました~ 森本 有樹 @296hikoutai

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