第5話 風間さんと荒野の決闘?!【5】


「……しかし、春戦争前にも頭を怪我して性格が変わったという話や統合失調症はクラスに一人はいるなんて統計は知られていたのに、なんで人は絶対的な理性なんて信じていたんだ?」

 真希が風間さんの部屋のサロゲートを通じて部屋に入ると、風間さんは机に突っ伏して寝ている所だった。

「まあ、それが「近代」が宗教の後釜だった所以だな。」モニターには風間さんの意図を離れて動画が流れていた古風な学習動画スタイル。「戦争がはじまってすぐ脱法AIが出て特定の作家さんの文書や絵を学習してそれっぽい形のものをお出しできるようになっても、脳は与えられた情報より先にはいけないと言うことを理解しようとしなかった。唯一違うのは初期の弱いAIと違って様々な感覚器官を混信させることができることだが、これも違法薬物の利用者にはそれなりに知られた話だ……」

「風間……」

 触って起こそうにも風間さんの部屋にあるのは頭の部分だけご浮遊するフライングドクロ……格安のサロゲート……だ。手なんかただのホログラムだし、衝突防止もあるから頭突きなんて論外だ。しょうがないから耳元まで近づいて8bit版音源の曲を可能な限りの爆音で聞かせる。やがて、ううん、と言って風間さんは夢から現実に戻ってきた。

「おはよ。」真希はその目覚めを歓迎した。「何でこんな動画を?生物学の勉強?」

「いや、相手が……セカンドなんじゃないかなあって……」

 真希もまあ、偏見はいくないと言いながら、自分もそれを疑っているよと言い、それからそれを肯定する。「客観で他人を踏み潰す仕草、正にそうじゃないか。再生医療で身体だけ若返ったお古の脳みそ、多分春戦争の傷を深くした昔のネット脳だろ。」ほら、火星にいくつもりだった例の社長のSNSとかで作られた、知識が道徳心引換券だと信じてる奴等の残滓……と。そう推察する「まーな、きっと何かしら哀れな理由があるんだろと。言ってることなんて所詮は悲鳴を上げた脳が走馬灯みたいに情報漁って、それを手癖でコミュニケーションの部位に投げつけた代物だからな……」

 と彼等を哀れんだ後、「だが……殺す。いいね」と指針を風間さんに話した。

 はいっと風間さんは返事をして決戦のバトルフィールドに飛び込んだ。




(うわぁ……)

 風間さんは目の前に現れた二人組に感じたのは、それだった。

 いくら人間には生存への欲求から来るマイナスの自己肯定たる他者差別の心があって人工知能のようには他人を愛せないとはいっても、その品のなさは思わず目を背けたくなる程だった。

「小娘、よく逃げないで来たな。てっきり逃げて勝利宣言してイキる醜態を晒すと思っていたぜ。」

「テラワロス」

「……ええ……逃げも隠れもしませんよ。当然です。」

「ふーん、まあ、こっちは悪足掻きぐらい楽しませてくれるか不安で仕方がない。」

「草」

 どこまで自分の尊厳を投げ捨てれば気が済むのかと思っていると、つかつかと音を立てて誰かが風間の前に立つ。真希だ。

「まあ、なんにせよ、対戦宜しくお願いします、だな。」

 そう言う真希の姿は敵のみならず味方からもドン引きするような姿だった。タンクトップにサンバみたいなマスクをし、更には謎のうすらでかい剣を両手に持っている。

「じゃあ、勝負は2対2、武装はIRミサイルは二発まで。レーダー誘導ミサイルは四発まで……これでいいか?」

「あ、この人は、何者?」

 敵が困惑している所に真希は「私は謎のエクスペルテンXだ!」と謎の部族が威嚇するかのように自己申告をした。

「ちょwww おまwww ……」

「い、いいから、早く始めましょ……」

 風間さんの声を合図に戦いは始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る