第5話 風間さんと荒野の決闘?!【4】
「ええと、敵機を落とすこと?」
それに、ぶー、残念。と真希は指でバツを作る。納得がいかない風間さんを前に、真希は話を進めた。
「答えは制空権とか航空優勢とか言われる「味方が自由に使えて敵に使わせない空」を確保することです。」
「用は戦闘機の制空任務って、それ単独では用はなくて、何味方に空を支配することにより付加価値を与える事が目的なんだ、例えば攻撃隊を阻止するとかさ。」
「たとえば第二次世界大戦なんかだと敵の爆撃を阻止しないといくないなら、敵機を直接落としたり、ダメージわあたえなけりゃいけなかった。だけど、視界外からミサイルを撃ち込まれたら、どうだ?のままボーッと飛んでいたら数十秒後には確実に撃ち取られる。欺瞞はあくまで逃げれる確率を上げるだけだし、絶対的な手段じゃない。それを秘術を駆使してただでさえ高くて貴重な飛行機を回避して突っ込ませるのは、相応のリスクを引き受ける覚悟が出来た時だけさ。
それでも、それを抜けても相手は編隊の仲間にそいつを撃ってもらえばいい。しかも撃たれた側はは回避のために運動エネルギーを失った後だ確実な不利が待っている。
だから、そいつは逃げる。遠くから飛んできている敵機ともなれば、燃料も限りある。だから、倒さなくても勝ちなんだ。」
あ、そうか、と風間さんは納得した。
「そ、それにそんなリスクを負ってまで相手を撃墜しようとすれば当然こちらは大損害。決して多くない味方機体をここで消耗して次の日のシフトどーすんのよ、って話もある。……だがこれがゲームで試合でミサイルで殴り合います!となったらまた話が違う。もし相手が長距離から撃ってきても、奪い合う空は存在しないんだから臆面もなく逃げてもいい。撃った方が無駄弾を撃つというペナルティを負うことになる。だから必然的に射撃距離がMAR(ミニマムアボートレンジ:回避ギリギリの距離)ギリギリになる。戦争じゃなくて戦闘を切り抜いた試合形式は機体を失うリスクなんて無いし、目的は相手の全滅だからむしろリスクを取って相手との距離を積極的に詰めていく。だから必然的に距離は近く、ミサイルを空気に吸うために低い空を飛ぶようになる……。」
言葉の洪水に風間さんは流されそうになっていたら。。
「要は同じ道具を使いながら空を支配するか、相手を確実に落とすかで戦いかたが違ってきて。それが射撃距離に現れるんです。」
「うん、イルゼちゃん……ありがとう……」
情報の洪水から抜け出した風間さんは体を後ろに投げ出しながら感謝する。
「つまりは確実に打ち緒としたければ確執に死ぬギリギリを攻めて相手を確実に殺せる位置にいる必要がある。戦争の一場面としてはその必要はないが試合で飛ぶならばそこが重要になる。」
「でも、それじゃあ、ずっと何も変わらないじゃないですか?」
「何事もなければね。」「そこで、崩しを行う。」「何とかして相手の編隊からいっきを孤立させる。あるいは、ミサイルを撃たずに温存して。」
風間さんはなんとなくイメージは掴んだ。ような気がした。
「じゃあ、口で行っても判んないだろうから体で覚えよう。」
元気よくそう言った、真希は風間さんの方を叩きながら。
「私も………」
「そうだが………」
一瞬硬直し、それから、七瀬の方を向く。嫌な予感がしていた。いまから激しく他人の操縦でふりまわされるのだ……。
「ごめん、無……」
「お前の始めた物語だろ!毒皿まで食え」
「わーん七瀬さんの鬼!悪魔!」
七瀬の目の前でがっつり後ろから捕まえられた風間さんはそのまま機上の人となった。
『じゃあ、始めるぞ。最初は互いの癖を擦り合わせるところからやる。』
イルゼと縦の編隊に移行した真希は訓練の開始を告げる。風間さんは暫くあわあわと慌てていたが、前席の真希が話し掛けてきたのを転機に、何をすればいいんですか?と聞こうとしたが、当の真希からそれが指示された。
『SAページ開けるか?それで、こっちと向き合った敵が迫ってきているかどうか、それを見てくれ。』
「でだ?風間……だっけ?」
話し掛けてきた真希はなれた手付きで機体を上下逆さまにして操縦桿を前に倒して背面で上昇しながらAIM-120を撃ち込み、かつ回避する体制に移る
「空戦がミサイルを投げ合うのは解ったと思うが、じゃあ、勝ちってどうもぎ取ると思う?」
風間さんは訪ねられて、解りませんと答える。
「正解は、こうっ!」
ミサイルを撃ち込み操縦桿を引く。高高度三万フィートから降下、そのまま入れ替わりに入ってきたイルゼに線上を任せる。そのイルゼが同様の動きをしたところに真希ぐ入る。
「二機でぐるぐると回る戦いでもし相手が入れ替わり入れなかったら?誰も敵の方を撃てない。つまり、隙が生じる。」
二回目の打ち合いで指示を出された真希は垂直に降りず、水平に旋回した。エネルギーを高度に預けた真希は、大きく縦に旋回していたイルゼと同じタイミングで敵の方を向く。ただし高度は大分落とした。
「相手は後ろに下がって建て直すか、個人的センスで押し返す必要に駆られる。ドラック起動もビーム機動も」
敵役のヨハンはイルゼを見つけることはできたが、真希は捉えることが出来ない。真希は『ウィニング』と宣告して必中距離まで近づく。ヨハンは確かに真希と反対方向に逃げるも追い付かれた。おまけに援護しに来たハンスは逃げる真希を深追いし過ぎ、あえなくイルゼの手にかかった。
「そうなれば孤立した相手を袋叩きに出来る。二対一にしてもいい。とにかく、相手の陣形を乱して孤立した奴を順に消していく。」
仕切り直して2戦目を始めながら風間さんはその真希の言葉を「つまり、連携を崩されたら負けるゲーム……」と要約してみた。「呑み込みがいいな……」と真希は肯定する
「ある意味で音ゲーだ。みんなでコンボを繋ぐ、繋ぎ損ねたら負ける。客に一人の天才がバッタバッタと薙ぎ倒すなんてのは滅多にない。もし相応しい天才とか、チートスキルがあるなら……」言葉の続きは、30マイル超射撃を撃ちながら、翼がふれ合う位置にいたイルゼにブレイクを命じた後、同じ大きさの円を空に書きながらこういう形にした。「他人と息を会わせる力だ。」
「コミュニケーション?」
「そうだ。」真希はそくどさを利用してイルゼの後ろにつき、再び縦の編隊に切り替えながら風間さんにそう答えた。「空戦は一人じゃ出来ない。互いを大切にして足りないところを補い、出来るだけの事をする。」
『祖母が、教官から聞いた話しに、似たようなお話があるそうです。………「人という漢字は命の本質を表している。人は一人では生きて行けない。良き友、良好な主従、良い家族、これが編隊戦闘の本質だ。」って。』
「いい言葉だ。」と真希は肯定した。「いい教官だったろうなあ、その人。」少し遠めのビームとチャフでAIM-120を振り切って敵側面を突くように見せ掛けて敵に背を向けて、ハンスを誘い出そうとしながらイルゼは言う。真希と共に編隊の「正面」がずれたことにより孤立したヨハンに迫りながら風間さんの頭の中にはある単語が浮かんだ。
「それって……リンカー……」
「あー、確かにそうかもしれない。」という雑な分析と言う名の連想ゲームの結果が真希の脳内から出てくる。「人と繋がる接着剤みたいな人が、人を繋いでいくという点では確かに同じだ。」風間さんはそれに対して「難しそうだなあ。」とプロの登山家が高い山を登っていくのを見上げたような気分になった。
『風間さん、そんなに怖気づくことじゃあありませんよ。風間さんだって、中々のモノですよ。』
「えっ……そうかなあ?」
『少なくとも、こうやって遠い文化圏に何の抵抗もなしに入っていくことが出来たんですから。』
イルゼに加えて、「まあ少なくとも、私らとリヒトフォーフェンは予想外の接点を持ったまちがっちゃいないかもな……」という真希の肯定に長子に乗った風間さんは「えへへ……」と笑ってみた。
その瞬間、引き付けられていたヨハンがイルゼに撃墜され、ミサイルをまっすぐ逃げて回避した真希が反転。残り一機を平らげた。
「よし、勝った。これて掴みは解った。」
振り回されて疲れた風間さんは、じゃあ、今日は終わりですか?と尋ねる風間さんに、真希は、「ん?いや、今からが本番だ……」と語る。
「ここから更に動きをピッタリ合わせていく。互いのニューロン発火の癖をシナプスに焼き付けて編隊の形状、敵への立ち位置、そういったものの解釈を統一し、阿吽の呼吸で相手を追い詰める。そこまでやる。」
『意義はありません。時間の許す限り飛びましょう……』
「あ……あの……」
風間さんは本当は疲れいて、もうギブアップしたかった。それなので、あと何戦ぐらいやるのか目安を聞きたかった。だがしかし時間がある限りというのが答えのようだと背中で真希が訴えていて、自分が話を振った案件で勝手に出ていくわけにもいかず目を回したまま練習に付き合わされた。
風間さんが開放されたのは考えることをやめてから随分と時間が経った後であった。そこから風間さんのニューロンがいつもの調子を取り戻すには丸一日を要した。
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