第5話 風間さんと荒野の決闘?!【3】

「誰?」

 風間さんがそう答えようと神経系が唇を動かしたタイミングで七瀬とイルゼの「マキ(姉orさん)……」が重なる。

 少し間を置いて、3人は「「「……え?」」」と声を合わせて互いに顔を見合わせた。

イルゼと七瀬は「何で知ってるの?」という意味で。風間さんは「知り合いなんですか?」という意味だ。

「イルっち!七瀬!久しぶり!」答は渦中の人物から出てきた。「なんだ?七瀬?リヒトホーフェンに練習試合の交渉か?相変わらず小さいが随分でかく出たな。」

「ちげーよ。」七瀬は慣れた言い方で否定した。「巻き込み事故に遭ったんだ。この、新入生の……」

 肩を叩かれた風間さんは誰なんです?と聞く。

「丁度風間と入れ替りで居なくなった先輩だよ。遥斗 真希(はると まき)今は大学生やってる」

 へえ、と風間さんは話を聞いていた。そしてマキはその風間さんをニコニコと観察していた。

「なるほど、「インスト」の言っていたなんか面白いヤツってこいついかあ……」

「真道寺先輩が……?」と聞く風間さんに七瀬は「あいつと同じチームだからね。」と言う。

 444飛行隊、その歴史は春戦争直前まで遡る。……コロナウィルスが空けたと勘違いした時に首相命令で曲芸飛行隊の余った予算を消費した時、翌年のオリンピックでその舞台が民間人の上にカラーをばら撒いた時、反政権の派閥はそれに対抗する方法を持たないと思い知らされた。結果、民間有志のアクロ飛行隊を持つべしという意見に辿り着き、その前段として生み出されたシミュレーター上の仮想飛行隊に源流を持つ逸話がある四半世紀の歴史を持つ由緒正しきゲームクランだ。当然風間さんにとって、中の人とこうして出会うのは(真道寺を除いて)これが初めてだった。

「ところでイルっち?なんとなく予想はつくが何の用だい?」

「あーっえーっ……それはかくかくじかじかで……」

 話を聞き終えるとマキはこれまで会った事も含めて「うんうん成程……。」と頷いて。「じゃあ、私が飛ぶ。」と言った。

「ああ、うん、一応、他のチームに声かけちゃダメとは言われていないけど・・・さ。趣旨違わない?」

「大丈夫だ七瀬!」真希は元気よくそう言った「子の仮面を被れば、ほら、私は謎のエクスペルテンX、ということで!」

 南の国に封印された邪神を象ったような面を付けた真希に七瀬は「んなわけあるかい!」と突っ込みを入れる。が、真希はこれを無視して話を続ける。

「で、機体なんだが、どうする?J-15でいいかい?」

「MiGが弱くない事を証明するための戦いなのに最強機体出すなんてだめでしょ。」とまともや突っ込みを入れる七瀬。風間さんは目の前に置かれた機体に「なんだっけ?こないだの映画に出てた……」と独り言を言っていた。そこに真希が顔を突っ込む。

「ほら、今やっている「母帰る」だよ。ほら、沖縄独立の、宮古島沖海戦のヤツ。」そしてとんでもない事を言った。「あれ、私も出てたんだよね。」

「えっ!」

「すごいでしょ!協力拒否した自衛隊と米軍の分の戦闘軌道、うちの隊のものだよ。」

 戦闘機道と壁ドンとの区別がつかない真希はノリノリでサイン貰うなら今の内だぞ。と言うも、なんか脳がノッてこなかった風間さんは、「あ、うん、いらないです。」と答えた。それにえーという唸り声でノリが悪いぞ、と訴えた真希の反応で話に落ちが付いたのか、真希は話を仕切り直すために一息の間を置いてイルゼの方を見る。

「で?ルールは?ヒストリカル?スポーツ?」

スポーツ形式ですね、とイルゼが答える。風間さんは「ルールが違うんですか?」と聞くと、真希は「ああ、ルールと言うより、戦いかたがな。」と答える。

それに疑問を呈した風間さんに真希は「じゃあ戦闘機の役割ってなんだ?」と謎かけをする。

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