第5話 風間さんと荒野の決闘?!【1】

「じゃあ、コールドスタート、やってみて。チェック項目は省いていいよ。」

 はい!と元気に答えた風間さんは右手を伸ばす。

「まずは。バッッテリーをオンにします。」

 一番右前列の電源をオンにする。

「次にAPUスイッチをオンにします。」

 APUスイッチをオンにする。その脇のランプが緑に点いた。機体の中から補助エンジンがが唸りを上げて回転する音が聞こえる。その音を七瀬は「いいね。温まってきた」といって次の動作を促した。

「その手前のエンジンクランクスイッチをオン、これで。補助エンジンの回転をエンジンに伝えます。」

 クランクスイッチを左に倒す。それからエンジンの回転数が上がるまで少し置いて、スロットルのフィンガーリフト……スロットル前の爪……を引いてカット・オフ位置からアイドル位置に。エンジンの回転数が更に上がっていき、そして、機内のシステムがピーピーと鳴り出した。それを合図にディスプレイの輝度を左右は昼間の、下のものを最大の所までもっていく。

 それから忘れずUFC下のスイッチを触る。左のHUD輝度ノブを最大に、横、昼夜モード選択で昼間モードを選択、高度計は大気圧高度計ではなくレーザー高度計を選択。姿勢制御選択オートモード。

「ええと、次は……」

「ここ、ここ……」透過モードで機体に体をめりこませた七瀬が指差しする。ブリード・エア・スイッチを一回転、エンジン吸気の一部を機内に導く。ついで、もう少し後ろのINSのアライメントを開始する。ついでに、機体に残った位置情報を使用した簡略チェックをするために、HSI画面左下二番目の「STD HDG」ボタンに触れておく。レーダーもスタンバイ位置までノブを回す。

 それからサポートページに戻ってフライトコントロールシステムのサブメニューを選択。これで、翼の歪みの情報をリセット、もう一度戻ってBITページを立ち上げ、HMD(ヘルメットマウントディスプレイ)で動作確認チェック、続いてFCS(フライトコントロールシステム)、動かない……どうしてだ?

「ここ、ここ」

 七瀬が機体の外から手を入れて壁を突っ切った手が手招きしている。右後ろのFCS-BITスイッチを押しながら、ディスプレイの左列上、「1 FCS」を同時押し、チェック。それから、ヘルメットの表示情報の位置のずれを修正、HMDページから一番左下のALINを選択、HUDとヘルメットに表示された十字があられる。その二つの十字を合わせて左右、そして傾きの微調整をケージ・アンケージボタンを押して完了する。

 データリンクとIFFスイッチは内容に変更なしのため、ON/OFFスイッチを押すだけにする。それから左前に手を持って行って、フックバイパス、ギアについた前灯、アンチスキット、をONに、フラップはハーフ。パーキングブレーキを押し込む。

「出来ました。いけます。」

「レーダー高度計メーター。」

 あっ!と言われて高度計脇のスイッチを押して最低高度を選択。数字は指定が無かったんで適当だ。ちゃんとレーダー高度計に切り替えるとHUD表示の脇にRが付く。こんどこそよし。風間さんはそういうと七瀬もニッコリOKを言ってきた。

「じゃあ、このまま離陸して、ターゲットドローンを撃ち落とそう。そしたら合格だ。」

はい!と元気よく返事をした風間さんは七瀬の機体が動くのを追い滑走路へ、それから空へと駆け上がる。



「風間……そういえば、外国チームの友達が出来たった?」

 風間さんが離陸して、それからオートパイロットのボタンからATTHスイッチで姿勢固定ボタンを押して水平を保たせたのを見計らって七瀬は話しかけてきた。

「あ、はい、イルゼちゃんのことですか?」

「そう、それそれ……こないだいっていた外人の子。」

七瀬は少し真剣な声で風間、いいか、と強い口調から話をする。

「そいつが認知球体を不用意に脂ぎった手で触ったりするような奴なら、または付き合いずらいと思ったら、いつでも逃げてこい。世界には40億人の人がいるんだ、合わない人がいて当然なんだ……」

 七瀬は言う。人と付き合うって大変だぞ。その人にとって大切な物も、誰かには道端の石ころとしか見られない。それを認められず、バカな戦争で傷付け傷付いたのが春戦争だ。

『人は意見の相違に我慢できない。回りを認識して知能を獲得してきた脳は、認識して分類することを止められない。』

『た、たぶん大丈夫ですよ、おっきいチームですし……』

『なら、いいんだけど……ただ、長い付き合いでなんか違うっていうこともあるし、知っての通りプロに足を突っ込んだところは…・・・』

 まあいい、やめやめと七瀬は言葉を遮った。余計なおせっかいだ。それこそ身勝手な風間さんの価値観への干渉だ。

 数秒静寂があり、目的の標的機にミサイルを誘導しながら『七瀬さん?』と「ちょっとろくでもない私事の話をしていいですか?」と合図する。『ん?』とそれを了承した七瀬は次の瞬間想像だにしない言葉を投げかけられた。

『決闘って興味あります?』

『……は?』

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