第1話 風間さんと風の翼【2】

数日後

「おう、風間!」

 放課後、仮入部の日々ももう半分というときに廊下で出会ったのは中学から同じクラスの滝 龍平だった。

「部活、決まった?」

「あー、いや、まだ決まっていない。」

そう言って滝は頭をかいて視線を逸らす。

「ガチな方は止める。やっぱり高校になってまで全国大会だ!っていうほどでもないし。」

「えー野球部やめるの?」

「あんなコロナ前どころか半世紀前の意識を引きずっている部活なんてごめんだ。最初から俺は甲子園なんてどーでもいいわ。剣道や柔道みたいに、資格が手に入るわけじゃあないし。」

 それから、一拍おいて風間は?どうする?と聞き返す。風間さんは「うん、大体ゲーム部回ってみたけど……」

 お前、好きだもんな。と滝は笑った。互いにゲーム仲間で何度も一緒の分隊で戦った仲間である滝は風間さんの嗅覚を頼りにしようと考えているようだ。

「飛行部、行ってみようかなあと。」

「ああ、飛行部か?あのいきなりアクロバットしてきたあの。」

そう、それ!と風間さんは少々興奮気味に言った。滝は俺もまあ、行ってないし、今日なら付き合うよ。という言い方で今日見学に行くことを提案した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 部室棟、文化部のそれが並ぶ一室に「飛行部」はあった。

「あ」ドアを開けると、ヘッドギアのまま机に突っ伏している少女は頭を上げた。「なんか、来た。」

「いきなりモノ扱い?!」

滝のツッコミを無視して彼女は、「おーい、めいこ~人が来たぞ~」と首を曲げて置くの誰かに声をかける。返事がすると、一人芽衣子、と呼ばれた少女の姿が露になった。

「あら、お客さんかしら?」

はい。見学に来ました。と風間さんは言う。分かった、じゃあ入って。と促されるままに入室する。

「初めましてね、私は薄井 芽衣子よ。で、こっちが……」

遮るようにベッドギアの少女が手を上げる

「私は江草 七瀬だよ~」

風間さんと滝も挨拶する。それから、今から体験入部の準備をするからと芽衣子は再び奥に去っていく。風間さんは携帯を取り出して体のベンチマークを開始する。

ナノマシンの接続は良好。

「あら、随分マメね。」

 ありがとうございます。と言い、風間さんは携帯を仕舞う。

「ゲームに入る前はきちんと確認しなければならないのがTPOですからね。」

 随分と気合いが入っているな、と滝がやっかみをいれるのを無視して七瀬は他にゲームは何をやっている?と聞いた風間さんは有名大手MMORPGの名前を挙げた。

「ああ、あれなら、私も少しはやってる。レベルはどれくらいだ?」

 風間さんは返答した。まあ、接続時間制限がある中学生にしては、なかなかいい方か、とゲームへの接続を準備しながら七瀬は感想を述べる。

「中々やってるじゃないか。どうして、普通のゲーム部じゃなくて、こちらに?」

 そう聞かれた風間さんはえへへと笑いながら、せっかく高校生になったんだから、新しいことをしてみたいと思いました。と語る。ほお、と面白そうな顔をする七瀬、戻ってきた芽衣子は、いいじゃない!ゲーム慣れなれしてるなら、ダイブで酔わないだろうし。とその経験を喜んだ。その間に七瀬がソフトウェアの立ち上げを慣れた手つきで行う。

「おっけー芽衣子、準備できたよ。」

じゃあ、お願いね。という芽衣子の合図と共に、風間さんはダイブの準備のために身構え。意識が吹き飛ぶのを待った。

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