第2話 風間さんと初めての空【3】

「じゃあ、今日からは、お待ちかね、戦闘機に乗っていくわ。」旋回と離着陸の訓練を早めに切り上げるて、芽衣子は二人に次のステップに入ることを告げた

 一度シュミュレーターを出て付属のVRチャットへと一時移動する。風間さんはとりあえず待っていてという芽衣子の指示に従って椅子に座る。どうやら七瀬は次の解説の準備でいないらしい。その証拠に数分後、「準備できたよー」という声が次の座学の開始を告げてきた。

『じゃあ、説明は任せたわ。』

 そう芽衣子が言葉を書けると風間さんたちは格納庫に移動した。

 おお、と風間さんは声を上げた。F/A-18戦闘機が既に武装を積んで待機している。

「今回はお待ちかね、基本武器の使い方をやるわよ。」

 シュミュレーターをVRチャットに重ね合わせる作業が終わった旨が表示された。オートスタートでエンジンを入れ、エンジンや電子機器を立ち上げ始めた。

「そういえば、武器システムのどれをやるんだい?」

 真道寺の問いに「レーダーから確実にやるわ。」という芽衣子。

「れ、レーダー?」

「武器……なのか?」

 風間さんと滝は二人のやり取りの意味を理解できない。それは敵を探す道具であって攻撃する武器ではないだろう。その問いに芽衣子は一応は肯定する表情を見せ、それから「そうでもあり、でも、一番大事な武器システムよ。」と答えて移動を開始した。


 見たことのない異様な空間に放り出された。不思議な空間だ。大地は無数の溝が行き交いまるで火星だ。だが、砂っぽいワケではないようだ。遠くを見ると四本、いや五本の塔のような巨大な山が世界を囲っている。

 なんだこれ?と不思議がる風間さんはキャノピーフレームのミラーに写ったものを、一度は何もおかしいものはないと無視して、それから違和感に気づいて二度見した。そして、振り返り、世界の真実を目の当たりにした。

『滝!後ろ!』

『あん?』

 呼ばれた滝も後ろを振り返った。そして驚愕した。そこには七瀬の顔があった。後ろの席ではない。機体の遥か後ろ、しかも顔は首を捻って見上げるほど高い位置に有る。

 認識に重大な齟齬に二人は一瞬思考を停止するも、全ての疑問は機体を半分だけ傾けるとあっという間に氷解した。地面だと思っていたそれは余りにも広大な七瀬の手相だった。

「はっはっはっはっ!哀れな虫けら共よ、お前達が大地と信じていたものは我が掌にすぎぬ。」

『ええと……?』

 孫悟空を罠に嵌めたお釈迦様ですか?と聞く風間さんに芽衣子は天に聳える同級生を仰ぎながら、『あれは、趣味よ。』と回答した。

『七瀬ね、幼稚園の時、「おおきくなったら、なにになりたい?」に「だいかいじゅう」って書いてたらしいの……。』

『は、はあ……。』

 人生いろいろ、趣味もいろいろと聞くが、よくわからない趣味もあるものだなあと風間さんは上手く呑み込めないまま「趣味」をただ眺めていた。一方、気が狂いそうだと笑う滝、新道寺は後ろから、でも、悪いことばかりじゃないと後ろを指差す。

『ほら、あんなに大きければ潜り込めば敵のレーダーからだって消えれる。』

 谷間くぐりは戦闘機モノの伝統芸だしね。という補足をする新道寺に谷間?と滝はフライトスーツの胸のふくらみを指して問う。一瞬天を貫く巨人の顔が曇った気がしたが滝は残念ながらそれを気に留めることが出来なかった。

『あれは山というより丘なんじゃないです?』

 その言葉は言うならば逆鱗を工業油を触れた手で触るような一言であった。しめやかにぶちギレた七瀬は「せいばーい!」と叫んで開いた掌を小指から一つづつ閉じ始めた。

『わ、わわわわわ、どうしますか?』

 風間の後ろに座る芽衣子は逃げて!と指示する。指示が飛ぶ以前に体が動いてフルスロットル。ポーズ状態がいつの間にか解除されたいた機体のエンジンを目一杯吹かして丸く縮まり始めた手のひらから出ようと飛ぶ。間一髪で風間は親指と人差し指の間をすり抜けて危機を脱すると、それを待っていたかのようにぎゅっと手が握られた。風間さんは後ろで爆発がしたような気がしたが聞かなかったことにした。

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「貧乳はステータス、故に希少価値。いいね。」

『『アッハイ』』

「そして私は着やせするタイプ。故に貧乳ではない。いいね。」

『『アッハイ』』

 推定一万倍の人差し指に刺されながらミジンコ程のデリカシーのない二人は開いたキャノピーから七瀬に謝った。

『七瀬、まあ、そのぐらいにしてあげなさい。話がいつまで経っても始まらないわ。』

風間さんを待たせているのを思い出した七瀬はああ、そうね。とそれから本日の解説のための小道具(超巨大)を腰から取り出した。



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 あとがき

 作者です。こんにちわ。氏ね(ぶっ放たれるAIM-120D)

 今回から技術解説、設定解説、意味のない作者の個人的意見を書いていきたいと思います。(かさ増しともいう)

 はい、今回は江草 七瀬のぶっ飛んだ文字通り規格外のシュミを書きました。書きましたとも。ええ。

 いや、これをやったのはたんなる性癖開示というより、次の展開を考えるにあたり、絵的に面白い展開を探していたら出てきたからという側面が大きいですね。

 予告すると、次はレーダー捜索範囲(Bスコープ)を話す予定ですが、その場合、扇状の捜索範囲をどうやって表示しているかを解説しよう、だけどただ永遠と机で座学するのは芸がない。何か絵になるシチュエーションは……→あ、バーチャル世界なら扇に乗せて解説してしまうか。→機械解説は七瀬に振るか。→ひ ら め い た というそれですね。

 あと、真道寺はただのセクハラだけど、「戦闘で不利な側が山で敵レーダー波を遮って敵の攻撃から逃れる」という戦術があったりするので、一概にただの馬鹿というわけではないですね。(無理な擁護)

 一応本作は全年齢を目指しているのでエログロはこのぐらいで抑えるつもりです。あしからず。そしてオスガキ二匹は今後その度にひどい目に遭ってもらう。ゲームの中だから例え核叩きつけられても実際安全だから問題ないね。

 F/A-18での谷間くぐりについて一言。エメリッヒ、映画で宇宙人を地球に突っ込ませたあのF/A-18Cにドラッグシュート、どこにも無いじゃないか!よくもだましたなァ!!(これが言いたかっただけ)

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