新学期6 通信記録
「何とも言えませんね」
「分からないのか? 他の二人には何も起こらなかったようだが」
「解析後のデータも……うーん、異常空間は収束した後も影響を残すことが多いですから。この映像記録の現象がこの生徒のせいなのか、この部屋に異常空間の名残があったのか、これだけでは判別しかねます。彼自身は何か言ってたんですか? 自分の周りにいわゆる超常現象が起こるとか」
「いや、何もないと言っていた……少し無口だが、何かに怯えているような様子でもなかったな」
「一年前、異常空間に接触していたわけだから、そのあたりが関係しているかもしれませんね。『面談』の最中は何事もなかったんですよね?」
「そうだ。静かなものだったし……一年前の話を含めて、どの話題にも大して反応しなかった。一年前の廃村に関わった他の生徒にも、今のところ何も妙な兆候は見られない」
「でも、明らかにこっち見てますよね。映像の乱れもひどい」
「そこなんだ。間違いなく彼は終始ほとんどうつむいたままだった。『面談中』にこんな動きはしていないんだよな」
「とりあえず監視継続ですかね。もちろん報告はしますけど……正直なところ、この程度の映像では上は眉一つ動かさない可能性が高いです。あとは、うーん」
「なんだ」
「あまり言いたくありませんが、
「作戦終了後の検査はパスしたぞ」
「検査結果は非開示でしょう。追検査の命令が来てないっていうだけですからね」
「体制批判に聞こえるな」
「同僚を心配してるだけですよ……でもこれ以上はやめときましょう。とにかく本所で再検の申請をしてみて下さいね」
「分かった分かった。大体、
「今度は貴女が体制批判ですか? ……ところで、もう一つ聞いていいですか?」
「なんだ」
「フィールド・エージェント志望って本当ですか?この任務も自ら志願したとか……」
「皆それを聞いてくるんだな。フィールドワークというか、私はもともと事務職が第一志望だぞ」
「ま、まじっすか……それ聞いたら、この間ボコボコにされた格闘教官泣きますよ」
「フィールドワークを希望したのはダメ元だったがな。まさか認可されるとは思わなかった。上はよほど本件に関心が薄いんだろうな。そういうお前も、実戦部隊は希望していなかったんだろ」
「そうなんですよ! エンジニア希望だったのに……あの適性テスト意味あったんですかね?」
「適性はあったんだろう。実際
「うーん、そもそも全員生還したし、あれは運良く相手が勝手に撤退したというか」
「強運も適性の内だ。いずれにせよ、今のところ監視任務は順調だ。これを機に私は晴れて転属、後方で定時生活を目指すぞ」
「どうだか。現場が手放すかなぁ、ていうか事務職はむしろ残業地獄……」
「何か言ったか?」
「いーえ、何も。いい夢見てくださいね」
「夢? ……まあいいか。通信終了」
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