うすよごれたメモ 6
最近、霧の動きがはやい。
霧はやっかいだ。濃くなると道が分からなくなる。まっすぐ進んでいたはずなのに、同じ場所に出てしまったりする。
以前は霧が出ると、隠れ家でじっとするばかりだった。
でも、最近出会った蘭堂さんのお兄さんのおかげで、霧の中でも迷わず進むことができる。年中霧がかかっているところでも大丈夫になったので、村の地図もだいぶ出来上がってきた。
最初出会ったときは目で訴えようとしてたみたいだけど、身体が半透明な幽霊なうえ、そもそも両目をえぐり取られて真っ黒な眼窩だけなので、全然伝わらない。次になにか話しかけようとするんだけど、口を引き裂かれているせいでうまく話せない。ようやく指さし確認で道を教えてくれるようになって、行動範囲が一気に広がった。
きょうも、お兄さんのおかげで小学校の裏山(いつも霧がかかっている)を探検できた。とくにきょうのお兄さんは絶好調だった。この山は正解のルートが複雑らしくて、お兄さんが交通整理の人みたいに素早くあちこちを指さしてナビしてくれたおかげで踏破することができた。
きょうは新たな出会いがあった。あたらしいばけものだ。動物園のワニみたいな姿なんだけど、ワニの頭のかわりに仙人みたいなひげを生やした老人の顔がくっついている。しかも人の言葉をしゃべる!ほとんど支離滅裂だけど。写生しがいのあるやつだった。
あと白身でおいしかった。すごく生命力がつよくて、ぜんぶたべおわって顔だけになってもあれこれしゃべってた。いいかげんうるさいのでベロを引っこ抜いちゃったけど。
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