うすよごれたメモ 4


 隠し部屋を見つけた。


 絵画教室か何かに使われていた木造の長屋だ。何も描かれてないキャンパスが、布を被ったままたくさん放置されていた。


 長机が立てかけられた壁。後ろのすき間から身体を入れると、部屋になっていた。白紙のスケッチブックやノートがたくさん。筆記用具があるのはうれしい。


 ここは、最近まで人が暮らしていた形跡がある。いろいろなメモ。村の見取り図が書きかけのまま、壁にかけてある。


 ぼくはうれしかった。ぼくだけじゃないんだ。にげようと必死だったんだ。結果はわからないけど…。


 作業机。万力が取り付けられてる。錆びの浮いた鉈、のこぎり、手作りの弓矢、オイル式のランプ。ポケットがたくさんついたズボン、頑丈そうなブーツ。いろんな工具が入った、大きなリュックサック。


 部屋の隅に布団。きちんと畳まれてた。理性だ。


 久しぶりに布団で寝た。

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