浸蝕 皐月京介(さつききょうすけ)



 駿。


 悪いのはお前だ。


 人が、愛が、努力もなしに自分の望むままそこにあり続けるなんてわけがないのだ。


 バイクが錆びてしまうように。


 スマホの電池が切れちまうように。


 最大の罪は放置だ、無関心だ。


 まあ、お前の場合はそのヤワな性格が原因なんだろうけどな。



 ***



 おれみたいなイケメンさんが三枚目のダメ男を演じるだけで、大量に女子が釣れる。


「なんかほっとけない、私がいないとダメだな」みたいな。


 そうして釣れた女子の一人が一色彩花ひいろさいかだ。


 最初こそおれのことを「キザ野郎」とか「気に食わない」とか罵ってたが、つかず離れず好意のサインを送ってたら、予想よりはるかに早くおれを意識するようになってた。免疫なさすぎだろ。



 ***



 今日の彩花は積極的だ。どうしてか聞いても本人は「ふふ、秘密!」なんて言ってるが、おれは知ってるぞ。今日は駿の誕生日だろ。嘘ついて浮気してるのがそんなに楽しいか?


 夜も積極的だった。初めてのくせに余裕ぶってた。最後は泣かせてやったけど。



 ***



 不安そうにしてたから「駿のこと好きなんだろ?だったら全然問題ない。そのへんは上手くやればいいよ」と言ったら安心してた。


 今日は旧校舎の屋上でしようかな。



 ***



 もう終わらせたいと言ってきた。ふむ。


 まさか駿が生き延びてるとは思わなかった。会いに行ったらしい。


 悲しげな振りをして「最後に、一日だけ付き合ってほしい」って言ったらOKしてくれた。ほんとちょろいな。


 たしかにちょっとおれの好みにかもしれない。出会った頃の勝気な空手少女の面影はかけらもなくなってしまった。


 朝まで彩花をした後「もう駿には会うな」と言ったら「もう会わない」と約束してくれた。



 さよなら駿くん。


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