うすよごれたメモ 8


 最近、が伸びない。特に「ルーキー」の数が伸びない。数が減っているようには思わない。


 この村はもはや村とは呼べないくらい広くて、探索しきれないほどだ。しかも広いだけじゃない。時間軸もおそらくぐちゃぐちゃなのだ。昭和中期の服装をしたやつもいれば、復員兵みたいな服装のやつもいる。いろいろな時空から、つぎつぎと異形が迷い込んでいるんだ。


 この村に迷い込んだばかりのころは、毎晩、獲物を探すやつらの唸り声におびえながらやりすごしてきた。なのに、ちかごろ奴らはに近寄ろうともしないし、むしろぼくの姿を見かけたら、あわてて逃げていくようになってしまった。


 ばけもののくせに。根性なしどもめ。


 なので最近は、やみくもに外に繰り出すのをやめている。あちこちに罠を仕掛けて、毎日仕掛けの成果を確認しに行く。落とし穴に落ちている奴、ロープでつるされてる奴、竹槍の罠に串刺しにされてる奴…そいつらを連れ帰り、解剖して内臓をスケッチしたり、「ベテラン勢」を釣るためのエサにしたりしている。


 最近は「ベテラン」相手にも退屈するようになってしまっている。こういうのにもマンネリってあるんだな。


 ずっと考えている。「長老」たちを狩る時期に来ているんじゃないだろうか。まずは奴らの住処や生態を把握する必要があるが…。


 壁さんとお兄さんに相談してみよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る